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介護経営のエッセンス
【介護経営の勘どころ⑤】人材不足を乗り越える鍵は「リーダーが抱え込まず手放すこと」
連載「介護経営の勘どころ」の第5回と第6回は、紺野が担当いたします(紺野プロフィールはこちら)。
介護業界の人材不足は、構造的な課題として深刻さを増しています。もはや「いつか解消される問題」ではありません。2040年には約280万人必要と試算される介護職員のうち、約69万人の不足が想定されており、各事業所は人手不足を前提とした経営へ本格的にシフトする必要があります。では、その突破口はどこにあるのでしょうか。今回は、現場でよく見落とされがちな「リーダーの役割転換」という視点から考えます。
人材不足は「数」だけの問題ではない
人材不足への対策として、以前は介護技術や介護ロボットなどによる職員の負担軽減、あるいは職員の離職防止による人員確保に重点がおかれ、介護業界での人材確保策が講じられていましたが、制度は生産性向上への取り組みへ移行しています。実際介護コンサルティングの課題も量より質へ、つまり、数の問題に隠れた「質の問題」が重要視されつつあります。
介護現場では、「生産性向上」に対するイメージが立場によって大きく異なります。
- 経営陣:収益性の向上=少ない職員で事業所を安定運営すること
- リーダー層:介護の質を守りながら、職員の負担感を減らすこと
- 現場職員:利用者とかかわる時間を増やすこと
この認識のズレが、組織としての生産性向上を阻む大きな壁になっています。リーダー層には、収益性と職員の働きやすさ、両方の視点が求められているのです。
リーダーが「手放す」ことが、組織を動かす
リーダー職に就いた方の多くは、現場職員として優れた働きを認められた方です。だからこそ「自分がやったほうが早い」という考えに陥りやすく、やる気のあるリーダー職ほど帳票管理から介護業務まで一手に引き受けてしまいがちです。リーダーに期待したい役割は、自身が2倍動くことではなく、組織を動かして組織力の向上(これは無限の可能性)の追求です。
「手放す」ために意識したいポイント
- リーダーは「何をやろう」ではなく「何を削れるか」を考えて職員とすりあわせをする
- 求めている結果(ゴール)を伝えて任せた後は、職員のやり方を静観する姿勢をもつ
- ミスを事前に防ぐのではなく、責任を持ちながら任せることを両立させる
大切なのは、職員一人ひとりに合った指示の出し方・任せ方を学んでいくことです。職員への信頼が組織全体の底上げにつながります。
リーダーの役割は「日常の管理」ではなく「組織の結果」
リーダー職と一般職の本質的な違いは、組織としての結果にこだわることです。日々の業務を細かく管理することよりも、月次・年間の結果を意識した動きが求められます。
自己判断ではなく、組織の中で自分に与えられたミッションを正しく理解すること——それがリーダーとしての成長であり、人材不足時代における事業所の強さにつながります。
本連載では、介護施設向けコンサルティングの視点から、経営改善の具体的なヒントをお届けしています。今回は「人材不足の根本にあるリーダーの役割転換」をテーマに取り上げました。採用による定量的な対策の前に、まずは組織内の役割と権限の見直しから始めることが、経営改善への確実な一歩です。
次回は、福祉施設の指標管理についてお伝えします。
このブログ記事は、弊社のコンサルタントが月刊誌「WAM」に執筆した記事をもとに再構成しています。厚労省の生産性向上ガイドラインも踏まえて、さらに詳しく知りたい方はPDFの記事もご覧ください。
(PDF)人材不足の心理的要因~リーダーが仕事を抱え込む理由
- ◆ 田中 律子 プロフィール ◆
- 2004年入社。以前のシステムエンジニアの経験より2000年に介護業界に関わったことをきっかけに、介護系事業所や介護請求システム会社を経由し、縁あって川原経営と出会い入社。福祉サービスに関する第三者現評価の業務を経て、現在は特別養護老人ホームや介護老人保健施設の戦略構想立案や経営改善、その他自治体からの研究受託などを行っている。医業経営コンサルタント資格保持者。
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