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介護経営のエッセンス

【介護経営の勘どころ⑥】数字だけでは見えない経営の実態──指標管理の「3つの目」

2026.06.01

 介護経営において、稼働率や収支差率といった数値指標の管理は欠かせません。しかし、特定の数字だけを追いかけていると現場の実態を見誤るリスクがあることをご存じでしょうか。本連載第6回では、介護施設における指標管理の考え方と、組織全体で活かすための視点を整理します。

定量指標だけに頼る落とし穴

 令和6年度の報酬改定では、訪問介護の基本報酬が引き下げられ、訪問介護事業所の倒産が想定外に相次ぎました。減額の根拠となったのは訪問介護事業の収支差率の高さでしたが、実態は常勤ヘルパーがフル稼働することによって、人件費率を引き下げ、高い収支差率であったことが少なくなかったのです。数値の裏にある「多忙感」「質」「行動」「満足度」や実際の「動き」「流れ」「負荷」といった定性的な変化を見逃すと、本質的な課題に対応しきれないといえます。

鷹の目・魚の目・蟻の目で指標を使い分ける

組織の指標管理では、職責に応じた3つの視点が有効です。

  • 鷹の目(経営者):中長期の財務計画や経営戦略を俯瞰する視点
  • 魚の目(管理者):報酬改定や制度動向などトレンドの背景を読む視点
  • 蟻の目(現場職員):利用者ニーズや職員の業務負担といったミクロの実態を把握する視点

 

 重要なのは、この3つの指標を突合し、組織としての最適解を探ることです。例えば、欠員で職員負荷が高い状況にもかかわらず、稼働が低迷しており、早急に利用者を受け入れなくてはいけない状況などは、職員への負荷がかかるけれど利用者を受け入れなければならないなど、異なる職責の指標報告に関心を寄せる姿勢こそが、バランスのとれた介護経営につながります。

まとめ:指標は「対話の材料」として活かす

 健全な組織運営にとって重要なのは、指標を並べるだけではなく組織内の相互理解を深める「対話の材料」にすることです。経営者・管理者・現場職員が同じテーブルで指標を共有し、最適解を重ねていく──それが健全な組織運営と介護経営の基盤となります。

 

次回は、特別養護老人ホームの経営特性と、その経営改善のポイントについてお伝えします。

 

このブログ記事は、弊社のコンサルタントが月刊誌「WAM」に執筆した記事をもとに再構成しています。管理者、現場職員それぞれの視点で捉える指標の具体例など、さらに詳しく知りたい方はPDFの記事もご覧ください。
(PDF)福祉施設の指標管理

 

◆ 田中 律子 プロフィール ◆
2004年入社。以前のシステムエンジニアの経験より2000年に介護業界に関わったことをきっかけに、介護系事業所や介護請求システム会社を経由し、縁あって川原経営と出会い入社。福祉サービスに関する第三者現評価の業務を経て、現在は特別養護老人ホームや介護老人保健施設の戦略構想立案や経営改善、その他自治体からの研究受託などを行っている。医業経営コンサルタント資格保持者。

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