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ブログ

保育所経営ブログ

VOL.62「限定正職員制度の活用について考える②」

2020.12.15

皆さん、こんにちは!

川原経営の神林です。

 

前回は、「“正職員同士”で異なる職務範囲や勤務条件などが発生している場合、どのように待遇を整理すべきか」
という点を解説し、保育園における「限定正職員制度」のメリットについてご紹介いたしました。

前回→VOL.61「限定正職員制度の活用について考える①」

 

限定正職員の定義は、園の職員の状況や働き方によって異なりますし、

どの程度の待遇差を設けるかなど、

具体的なルールは園で検討していく必要があります。

 

今回は、この制度を導入する際のポイントについてご紹介します。

 

①限定正職員の勤務範囲を定める

まず、正職員と区分する上での「勤務制限の内容」を定めます。

保育園における限定正職員の区分事由には、以下のような事例があります。

 

〇他園への異動がない

〇早番・遅番・休日保育の出勤がない

 

限定正職員制度は、本人が働き方を選択できる点がメリットの一つです。

そのため「保育士資格を持っていない」「経験がない」などの事由は、

本人に選択の余地がないため、区分事由に設けることは不適当と言えます。

 

②正職員との待遇差を定める

限定正職員は、正職員に比べて勤務内容が限定的であるため、

「その範囲に応じて」待遇差を設けます。

以下は待遇差の一例となります。

 

〇基本給の昇給率  :標準昇給率-0.5%

〇基本給の昇給号俸:標準昇給号俸数-1号俸

〇賞与基準月数    :標準賞与月数-1.0ヶ月

〇退職金支給率    :標準係数-1.0ポイント

 

「どの程度の待遇差が妥当か」という点が、最も難しい検討事項となります。

勤務制限があること以外は、同様の職務を行うという前提において、

極端な格差(賞与なし、昇給なし等)は不合理と言えます。

 

正職員が実際に早番や遅番に入る時間が、

月間総労働時間に対してどの程度あるのかを検証するなどし、

一定の根拠に基づいた設定が重要です。

 

③導入の際の留意点

制度の枠組みを検討した後、すぐに導入するのではなく、実際にこのような制度が導入されたら希望するか、事前に職員にヒアリングやアンケートを行います。

 

万が一、想定以上の希望があった場合、シフトを組めなくなったり、園の運営に支障が出てしまう可能性があります。

 

そのような場合には「定員枠」を設ける必要があるため、事前に意向調査を行うとともに、希望が多かった場合の選定基準を検討します。

 

選定基準の一例

  • 自身の傷病・体調を理由とする場合
  • 子の育児を理由とする場合
  • 親の介護を理由とする場合
  • その他、自身の都合・意向を理由とする場合

(※優先順位が高い順)

 

なお、この制度は本人の申告に基づくことが前提ですので、

園側が人件費を抑制するなどの目的で、

一方的に限定正職員への変更を命じることはできません。

(※労働条件の不利益変更に該当し、本人の合意が必要となります)

 

導入にあたっては整理すべき事項や事前の準備が不可欠です。

ご検討されている園がございましたら、ぜひご相談ください。

 

 

◆ 神林 佑介 プロフィール ◆
人事コンサルティング部 副部長。2012年入社。保育士・社会福祉士。保育園、そして老人ホームで働いた後、オーストラリアへ留学。帰国後、会計や経営コンサルティングの仕事は未経験ながら、コンサルという仕事への憧れ、そしてホームで働いた現場経験を活かせるのではないかという想いをもって、この世界へ飛び込んだ。以来、介護・福祉施設の経営コンサルタントとして主に法人開設支援などを行なっている。
© Kawahara Business Management Group.