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事例研究 - 医療法人社団 津端会 京葉病院 (東京都江戸川区)

~新型コロナウイルス感染症における取り組み~


JR新小岩駅よりバスと徒歩で約20分にある「医療法人社団 津端会 京葉病院」。京葉道路に面した立地で交通外傷が多い地域です。昭和36年開設以来、“地域に安心感を与える医療”を基本方針とし、救急医療を中心に地域医療を提供してきました。今回は、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)が経営に与えた影響と対応について、院長の津端徹先生にお話を伺いました。


法人概要
医療法人神甲会 隈病院

名 称:医療法人社団 津端会 京葉病院
住 所:東京都江戸川区松江2-43-12
開設者:医療法人社団 津端会
理事長兼院長:津端 徹
病床数:一般60床

診療科目:
外科、消化器外科、内視鏡外科、形成外科、脳神経外科
整形外科、リハビリテーション科、リウマチ科
内科、消化器内科、腎臓内科(人工透析)、内視鏡内科、循環器内科、脳神経内科、泌尿器科
麻酔科

ホームページ:https://www.keiyo-hp.jp/


新型コロナによる影響

 新型コロナの影響で経営状態は悪化しました。3月に外来患者数が前年比8.9%減少、4月には23.9%の減少でした。厳しい患者数減少でしたが、それよりも院内感染発生によるダメージを恐れていました。2週間の自宅待機職員が大量にでてしまうこと、外来休止、入院中止。そして、風評被害による院内感染解消後のマイナス。特に多くの透析患者を抱えていますので、その引き取り先の選定が相当困難であることを考えると幹部職員のみならず院内に良くない空気が漂い始めていました。コロナウイルスより先に、モチベーションダウンし自滅してしまいそうな状況となっていたので、それを打開すべく対策を行いました。

 そこで、まず新型コロナ関連情報をリアルタイムになるべく多く収集・解析して、それに対する当院の考え方と対策、その効果について、毎週月曜日に職員を招集して説明しました。説明の内容は、1週間ごと1か月間ごとの状況分析と対応・効果、その後の見通しを3か月区切りに分けて、説明しました。

 次に、当時不足していたサージカルマスクを可能な限りかき集め、職員に提供して公共交通機関で通勤する職員には1週間に5枚ずつを通勤用として無償配布しました。外来患者・入院患者すべての人にサージカルマスク着用を指示し、持っていない人には病院から無償配布しました。患者-職員の相互がマスクをきちんと使用していれば感染は起こりにくいと何度も説明し、職員の安全確保が第一なので、十分な量を備蓄してあるので安心して良いと伝えました。職員には「この職場は、新型コロナ発生時から対策と備蓄をしていたので安心だ」を理解してもらいモチベーションを保ちたいと考えたからです。

 そして、すでに院内に無症状コロナ感染者がある程度存在すると想定した院内感染拡大予防策をとりました。クルーズ船内での感染者下船後の解析情報、さらに院内感染やクラスター発生場所の状況解析から、マスクをしない場所での感染予防の徹底とトイレ床面と寝具(唾液喀痰など排泄物が付着したもの)が重要と考えました。院内の重点場所は食堂と更衣室と判断しました。食堂は、それまでセミビュッフェ形式でしたが、無言での完全給仕制(当院では給食当番制と呼んでいます)とし、複数名が触るトング・しゃもじ・おタマなどを完全に排除し、食事前は石鹸での手洗い、食事中は完全無言。終了時は各自テーブルを消毒ディスポシートで清拭することを義務化しました。更衣室や自転車置き場などは、マスクなしでの会話をさせないように厳しく指導しました。

 外来診療については、手すりドアノブの定期的なアルコール清拭や排煙窓の全開で待合室を換気、トイレのエアタオルの使用中止、面会中止を行いました。

職員、患者そして患者家族、出入り業者すべてに、「三密を避け、手洗い、マスクが大切」と説明しました。

職場を離れての指示は、他府県への旅行中止のお願いと3人以上の会食の禁止です。

これらの対策は、適時手直しはしていますが、現在も継続しています。面倒がる職員はおりましたが、明らかなモチベーション低下なく現在に至っております。「これだけやっていれば院内感染の拡大はまずないね」との職員同士の会話を聞くと満足感すら感じました。

 しかし、これらはすべて院内感染拡大予防策であって、コロナ禍および新型コロナ収束後の病院の適切な運営には直結しません。また、地域の医療機関としての感染者への対応として十分なものではないと判断しました。

そこで院内で積極的に新型コロナPCR検査を開始し、職員、通院および入院中の患者さんに適時検査を実施することにしました。


PCR検査の開始

 5月からPCR検査を開始するための準備に入りました。そのころ近隣の病院のいくつかは、新型コロナ患者さんの入院を受け入れていました。地域の検査体制をみると、江戸川区医師会ではドライブスルー方式の検査を実施していました。車で来院される方のみを対象としていました。

 5月初め、陰圧診察室を院内に作り、新型コロナ疑い例の検査と診察をしようと工事を進めていました。院内工事の打ち合わせ中に、普段からお付き合いのあった換気ユニットを取扱っている株式会社フナボリ(本社:江戸川区)の社長さんと話をする機会があり、社長から「フナボリの製品を使えば安全に検査ができますよ。危険なことはありませんよ」とのお言葉をいただきました。その2日後にさっそく、千葉県市原市の工場を視察させていただき、ほぼ完成していたエコウォールユニットの排気ダクトにHEPAフィルターの装着と、排気ダクトカバーを提案しました。すぐに対応していただき、2日後には提案を反映した製品が組みあがり、その2日後には病院に搬入されました。導入を決めてから4日と迅速に対応をしていただきました。

 陰圧室というのは、その部屋の中のものが外に出ないというだけで、中にいればマスクをしていてもお互いの息を吸います。一方、換気ユニット内では空気はフィルターを通して外に出ていくので循環しません。一般的な扇風機の最大約300倍の風量が常に流れていています。風上に職員、風下に患者さんがいる状態で検査をします。

 また、排気口が患者さんの顔のそばにあり、会話している時に出るウイルスを含め浮遊している粒子も吸ってれるので非常に安全度が高いです。

 導入にあたりコストはかかりますが、職員の不安を解消しモチベーションを保つには代えがたいと思います。


急速換気ユニットでのPCR検査

 換気ユニット導入後は、私だけがPCR検査を実施していましたが、患者さんがたくさん来た際に私が換気ユニットに来るのを患者さんが待てないという状況がありました。看護師からの提案もあり、現在は主に外来の看護師が検査を実施しています。

 検査にあたり、院内感染防止対策委員が外来看護師にPPEの着脱方法を指導しました。また、私が換気ユニットの仕組みを説明し、白煙を焚いてデモンストレーションを行い、安全であることを納得してもらいました。外来看護師の受けは非常に良かったです。

 たとえ構造上安全でも、現実的に安全だと看護師自身に受け止めてもらわないといけないので教育は丁寧に行いました。

 新型コロナ感染(疑いを含む)患者さんの入院の受け入れを10月に始めました。当初、入院の受け入れに対して積極的でない看護師もいました。そこで感染対策の勉強会の実施、患者さんのデータを分析して感染リスクを評価し、グループ分けしました。新型コロナ確定または疑い例と新型コロナ否定可能例に分け、それぞれを低・中・高リスクグループに分類しました。そのリスクに応じ、提供する医療行為の際の感染防御を指定しました。その結果、それぞれの感染防御の必要度と不必要度が十分理解され安全な診療が可能となりました。


今後について

 PCR検査がきかっけで「近くにこんな病院あったんだ」と改めて認識してくださった患者さんもいて、9月からは患者増につながりました。また、新型コロナ収束後の集患に向けて始めようとしていることもあります。今回の新型コロナの取り組みなどを通して、今後どのように京葉病院が変化していくかをみていただけたらと思います。

取材日 2020年10月6日

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