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事例研究 - 新潟県厚生農業協同組合連合会 長岡中央綜合病院(新潟県長岡市)

~病院機能評価受審とその後の取り組み~
地域の中核病院として、たゆまぬ医療の質向上に取り組む
医療圏でトップクラスの放射線治療機能を中心に“良質で心温まる医療”を提供する長岡中央綜合病院

 今回取材させていただいた長岡中央綜合病院は、昭和10年、医療に恵まれない農村の共同利用医療施設「中越医療組合病院」(40床)として開設されて以来、幾多の増改築を重ね、平成17年10月に現在地へ移転新築し、標榜34科で500床の中核病院として地域医療を担っています。平成18年に地域がん診療連携拠点病院に指定、令和3年に地域医療支援病院に承認され、令和5年2月に病院機能評価3rdG:Ver.2.0の認定を受けられました。

 病院機能評価では、初めての受審にも関わらず機能種別「一般病院2・区分4」でS評価(秀でている)1項目、A評価(適切)65項目と高い評価を受けられ、さらに受審を機に医療の質向上に取り組まれています。今回、院長の矢尻洋一先生はじめ5名の方にお話を伺いました。


病院概要

名 称:新潟県厚生農業協同組合連合会 長岡中央綜合病院
住 所:〒940-8653
新潟県長岡市川崎町2041番地
開院:昭和10年 / 病床数:500床 / 院長:矢尻洋一

<主な沿革>
平成15年4月臨床研修病院 指定(基幹型)
平成17年10月病院新築移転、新病院開院
平成18年8月がん診療連携拠点病院 指定
平成20年7月DPC導入
令和3年3月地域医療支援病院 承認
令和5年2月病院機能評価3rdG:Ver.2.0認定

ホームページ:https://www.nagachu.jp/


病院機能評価受審のきっかけ 病院をひとつにまとめる好機に

院長 矢尻洋一 先生

矢尻院長:私の2代前の院長先生の頃から、病院機能評価を受審しようという話はでていました。前任の富所院長の頃、令和4年に地域がん診療連携拠点病院の指定要件に「第三者評価の受審」が追加され、令和4年度診療報酬改定では「総合入院体制加算1・2」に医療機能評価の受審が要件化されました(当院では当時「総合入院体制加算3」を算定)。このような制度改正が受審のきっかけでした。当時私は副院長で令和4年に院長に就任しました。

 当院は、地域の中核病院として質の高い医療を提供している実績があります。ただ、系統立てて網羅的に自己評価する機会はなく、そもそもどこに問題があるのかも把握できていない状態でした。自院の組織や医療の質が全国の標準と比べてどうなのか、職員にも(受審に向けた)仕事が増えるのではなく、自分たちの仕事を見直す良い機会と考えるよう繰り返し伝えました。病院をひとつの目標に向けてまとめるチャンスでもありました。

 審査ではあらゆる部署にチェックが入ります。私自身も栄養科、物品管理など院内はもちろん、外部の清掃業者さん、院内の掲示物など普段なら表に出ないところまで把握することができ、院長として病院全体を理解する良い機会となりました。また、病院機能評価では病院全体、多職種での取り組みが重要なテーマになっています。組織的取り組みに重きが置かれていたところは勉強になりました。

 また今回、手術の同意書やマニュアル等も最善のルールに統一する作業ができました。一例を挙げれば、病院機能評価の受審をしていなければ、診療科によって同意書の取り方にばらつきがあったこと自体が把握できていなかったと思います。業務の無駄もなくなり、患者さんの安心にもつながりました。


病院機能評価受審による他職種との連携が、看護業務を見直すきっかけに

お話を伺った方々(左から)
副看護部長 岩根和子 様
院長 矢尻洋一 先生
放射線科技師長(現任)若山純平 様
放射線科技師長(前任)折笠康宏 様
総務課長 和田博美 様

岩根副看護部長:多くの病院もそうだと思うのですが、当院にもいわゆる“ローカルルール”がありました。病院機能評価の受審は、これまで看護部が慣例として行っていた業務を、他部署と連携して見直す良い機会となりました。例えば、審査で患者の安全確保に関するマニュアルの多くを看護部で作成していて医療安全管理部門の関与が十分でなかった点が指摘されました。薬剤部との連携不足も指摘され、例えば病院機能評価では注射薬の病棟への払い出しは、1患者1施用とされていますが、これができておらず薬剤部と相談して調整することになりました。今まで通りであればなかなか改善できなかったと思います。「ここはできていないと(病院機能評価の)本審査は通らない」と言われ、特に危機意識をもって取り組みました。その他、救急カートの点検や病棟配置薬の薬剤師による確認が十分でないとの指摘を受け、薬剤部の協力を得ると良いという助言もいただきました。薬剤師の人員的にすぐには難しいところですが、将来的にうまく連携し、看護師がより看護業務に集中できるようにしていきたいと思っています。


S評価を受けた放射線治療 地域に求められる放射線治療の在り方を意識

折笠前技師長:S評価をいただけた「放射線治療機能」について、当院は中越医療圏ではトップクラスと自負しています。放射線治療科は令和元年に設立され、その際に放射線治療棟を新設、医療機器も更新しました。医療機器更新時に重視したのは放射線治療への地域貢献という観点でした。ただ装置だけよくしてもS評価を受けられません。品質管理については、医師、診療放射線技師、医学物理士、看護師、事務職員それぞれの職制が理解した上でコミュニケーションを取れていることが良い評価につながったと考えています。

 紹介患者さんの確保については、医師間での口コミの効果が大きいと思います。新潟大学から派遣医師の受け入れとして、週に2日、非常勤医師に来ていただいています。また、当院の医師が大学で講義を行っています。こういった人的交流によって、当院のトモセラピー(※)などにより治療効果も高く患者さんのご負担も減るという情報が地域の放射線治療医に広がり、良い形で地域貢献ができていると思います。ホームページや広報誌にも情報を掲載しているので、地域住民の方々にも知られるようになりました。最近月に数件、患者さんから電話でお問い合わせいただきます。病診連携室経由で技師長に内容の照会がきたり、直接技師長が患者さんとお話ししたりします。地道な対応ですが、効果が広がっていると感じます。

 また、放射線科全体の今後の課題としては、被ばくに関する患者さんへの説明です。医師が患者さんとの検査の説明と同意をいただく際に、放射線科が協力した上で説明できる体制を確立したいと思っています。放射線の被ばくについて医師が熟知するのはなかなか難しい一方、国民の被ばくへの関心は近年高まっていて患者さんからの問い合わせも増えています。一昨年から職員研修も行っているので数年以内には問題なくなるとは思います。今は過渡期なので、医師から依頼があれば診療放射線技師が代わりに患者さんに説明するなどしてバックアップしていきたいと思います。


効率的に受審できるよう外部コンサルタントを活用

矢尻院長:本審査(令和4年10月)の2か月前の模擬審査が勉強になりました。本審査では、模擬審査で質問された内容と同じような質問があって、まさに予備校の模擬試験のようでした。結果として本審査に自信をもって臨むことができました。私は思ったよりうまくいったなと思っています。

和田総務課長:当初、受審に向けて何に手を付けて良いか分からず、強みと課題の認識が難しい状態でした。コンサルタントには、答えのような“合格するための近道”を教えていただきたいという気持ちが率直なところでしたが、病院側で考えることを促されました。本審査に向けて徐々に各部署の熱量が上がっていく中で、何が足りていないのか、アピールできるところは何かを自覚して、質の改善に取り組めたと思います。自分たちで考えることが重要だと気づかせていただきました。

 本審査を受けた時の感想は、模擬審査をしていただいたときのその通りの流れで受けることができたのがありがたかったです。

岩根副看護部長:細かいことを通りすがりにお聞きしても、丁寧に教えていただきました。病棟をラウンドしているときも、他院がどうしているか教えていただき参考になりました。

※トモセラピー:CTスキャナーと放射線治療システムを統合した装置。治療範囲が広い場合や複数ある場合、回を区切ることなく一度に治療を行うことができる。


不断の医療の質向上に取り組む

矢尻院長:今回の受審で終わりではなく、5年後の更新審査に向けた3年目の期中の確認もあります。今回指摘されたことを各部署でリスト化するよう指示しました。医療の質向上への組織的取り組みはこれまでできていなかったので、日本病院会のQI(Quality Indicator)プロジェクトに参加し、毎月当院のアウトカムを提出しています。また、令和4年9月から当院のホームページには患者数・手術数も公表するようにしました。

 受審が終わりしばらく経ち、多職種の連携がまた少し縦割りになってきているので、連絡や業務の協力を維持できる組織づくりを定着させたいです。特に、看護部には大きな負担がかかっているので、タスク・シフト/シェアのためにも連携体制を継続的に見直したいと思います。

岩根副看護部長:師長同士では、良い評価を頂いた項目は、継続して維持していこうも話しています。改善点としては、審査では身体拘束について同意書の記載に一部不十分な点があるとご指摘いただいたので、医師と連携をしながら、カンファレンスの在り方や指示の出し方の検討を今年度から取り組み始めています。

和田総務課長:「教育・研修」はC評価になりがちな項目と事前にお聞きしていました。当院ではB評価を得られてホッとしています。ただ、各部門で取り組んでいる初期研修、専門研修の参加率などを病院として十分に集約しきてれていません。総務課としてはシステマティックに研修の参加率を把握できるようにしたいと思っています。次の更新審査に備えて、情報の取得体制を構築したいと思います。

若山技師長:私は令和5年4月に技師長に就任したばかりです。院長のさきほどの話しにもあったとおり継続性の観点から、異動などがあっても組織として業務の品質を維持する必要があります。放射線科は他部署と異なる法律の縛りが多いので、日ごろからきちんと管理はできているという自負はしていました。今回受審したことによって、確実に理解できていなかったところが洗い出せて、そこを改善することができたのは非常に良かったと思っています。前任の折笠前技師長が作られたこれまでの流れを引き継ぎつつ、今後のさまざまな法改正にも対応したいと思っています。

取材日 2023年5月10日

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