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介護経営のエッセンス
コロナ禍における社会福祉法人運営のエッセンス 理事会・評議員会の決議の省略(みなし決議)について
年度末を迎え、社会福祉法人の令和2年度補正予算や令和3年度当初予算に係る業務が大詰めを迎えています。多くの法人様は新型コロナウイルス感染症の流行により会議体の開催について苦慮されていると思います。
今回は特別編として、そういった状況を踏まえ、理事会・評議員会の決議の省略(みなし決議)についてお話しします。
1.コロナ禍の現状と会議体の開催における対応について
厚生労働省からも昨年度に引き続き、法人に感染対策を配慮した理事会・評議員会の開催への対応が求められており(※1)、その対応策として「開催時期の柔軟な対応」や「テレビ会議での開催」と合わせて、「理事会・評議員会の決議の省略」が謳われています。
平成29年度の社会福祉法改正(以下、社福法改正)により、理事会・評議員会においては書面や持ち回りによる議決権行使は一切禁止されたことから、みなし決議をとる際には各法人が定める定款に沿ったプロセスで行います。
※1 令和3年2月12日付事務連絡 厚生労働省社会・援護局福祉基盤課
「新型コロナウイルス感染症の流行下における社会福祉法人の運営に関する取扱いについて」
2.社会福祉法人におけるみなし決議の基本的な考え方
そこで、基本となる社福法改正時に厚生労働省より示された社会福祉法人定款例をもとに、理事会・評議員会のみなし決議を行うにあたり、必ず押さえて頂きたい重要なポイントを一度整理してみましょう。定款例にはみなし決議について、下記のとおり定められています。
第一三条
4 第1項及び第2項の規定にかかわらず、評議員(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、評議員会の決議があったものとみなす。
第二六条
2 前項の規定にかかわらず、理事(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監事が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、理事会の決議があったものとみなす。
引用元:平成28年11月11日発出通知・事務連絡
「社会福祉法人の認可について」の一部改正について(社会福祉法人審査基準、社会福祉法人定款例)」厚生労働省雇用均等・児童家庭局長 社会・援護局長 老健局長
この定款例に準ずる形でご説明します。条文にあるとおり、みなし決議には、理事・評議員の全員の賛成が必要です。1名でも賛成の意思表示が得られなかった場合、みなし決議をすることはできません。
これは「意思表示ができない」場合でも同様です。つまり、「理事や評議員が病気で意思表示が困難なため、後任候補者を選定する議案」でみなし決議はできません。
3.個別の注意事項
みなし決議における理事会、評議員会それぞれの注意事項をお話します。
〇理事会
1.書面の文言
定款例に準じているならば、みなし決議には理事全員の「賛成」と監事の「同意」が必要です。理事・監事に提出する書面の文言にはご注意ください。
2.議案内容
理事会をみなし決議で行う場合でも「評議員会の招集」及び「評議員会の日時及び場所並びに議題・議案」について決議する必要があります。理事会と合わせて評議員会をみなし決議で行う場合には、評議員会の招集を行う議案へ「書面による開催」などの記載が必要です。
3.議事録
みなし決議においても通常の決議と同様、同意書のほかに議事録の作成が必要です。
通常の議事録と同様の項目を網羅した上で、理事会の招集者である理事(通常の場合、理事長)以外の理事、最低1名を議事録署名員とし、署名押印が必要です。
4.理事会への報告事項
注意点として、「理事長及び業務執行理事による理事会での職務の執行状況の報告」については省略できず、実際に開催された理事会において報告を行う必要があることとされています。
前述の厚生労働省の通知では、所轄庁が法人指導監査を行うにあたっては、当該報告の時期の取扱いについては柔軟に対応することとされています。
定款で定められた理事会への報告の回数を確認の上、ご対応頂きますようお願いいたします。
〇評議員会
1.議事録
評議員会のみなし決議の場合でも議事録の作成が必要です。この場合は議事録署名員に定めはありません。ただし、議事録作成者の氏名の記載は欠かせません。実際の例としては、評議員のどなたかに同意を頂き、署名押印を頂くと良いでしょう。
4.最後に
本ブログでは定款例をもとに解説しました。実際の運営においては法人の定款や定款細則に準拠して頂くようお願いいたします。
また、社会福祉法人に対する指導監査については社福法改正時、全国一律の「指導監査ガイドライン」が示されております。今回は同ガイドラインに準拠した内容でご説明しておりますが、実際の法人運営においては管轄する所轄庁により判断が異なる場合がございます。
最後になりますが、法人運営にかかわることでありますので、たとえ書面であっても理事・評議員への丁寧な解説が欠かせません。
これらの点にご留意頂き、よりよい法人運営の一助となれば幸いです。
- ◆ 田中 律子 プロフィール ◆
- 2004年入社。以前のシステムエンジニアの経験より2000年に介護業界に関わったことをきっかけに、介護系事業所や介護請求システム会社を経由し、縁あって川原経営と出会い入社。福祉サービスに関する第三者現評価の業務を経て、現在は特別養護老人ホームや介護老人保健施設の戦略構想立案や経営改善、その他自治体からの研究受託などを行っている。医業経営コンサルタント資格保持者。
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