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ブログ

介護経営のエッセンス

第4回 介護報酬改定に向けた準備 トップダウンの必要性

2020.12.29

皆様、こんにちは。川原経営総合センターのシニアコンサルタントの田中律子です。

 

今回は、介護報酬改定にちなんで、テーマを少し変更させていただきました。2021年度の介護報酬は0.70%のプラス改定に決定しました。そのうち+0.05%は、新型コロナウイルス感染症対応のための特例的評価として2021年9月末までの期限付きです。皆様の事業所では、介護報酬改定に向けて対応準備は進めていますか?コロナ禍においてほとんどの法人が、多少なりとも経営的な影響を受けています。今回は、通常の介護報酬改定の対応よりも早期対策が必要です。

 

ところで、皆様の事業所では、第1回のブログでご紹介した特例算定(第12報)の取得状況は、どの程度でしょうか。厚生労働省の調査結果では、通所介護事業のうち50.6%の事業所が算定し、その適用事業所では利用登録者のうち79.3%が算定しています。

 


※社会保障審議会介護給付費分科会 第190回(R2. 10. 30) 資料1より引用

 

この特例算定の是非については、利用者の負担を強いる点に疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかし、コロナ対策として認められた制度を適用することなく、経営が維持できるかを考える必要があります。

 

私がご支援しているお客様の経営会議において、特例算定(第12報)が発表された際に、事業所管理者から法人の方針を明確にしてほしいという発言がありました。特例算定は、通常の介護報酬改定対応とは異なり、利用者の事前同意が前提です。今回のケースでは、コンサルタントから現在の財務状況の厳しさと利用者負担の増加額概算を説明し、その場で法人の方針として算定を決定しました。先の発言をした事業所管理者は、自身の裁量の範囲では判断が難しい、もしくは法人として統一した方針が必要、また、現場職員に納得いく説明がしにくいなどと考えたのでした。もし、経営会議で、事業所管理者から率直な意見が出ていなければ、おそらく算定には至らなかったことでしょう。

 

今回の介護報酬改定では、新型コロナ感染対応として6ヶ月のみ+0.05%の財源が充当されます。改定後は、通所系事業では、特例算定(第12報)を廃止し、大規模事業所における報酬区分の柔軟な対応や一定期間の臨時的な利用者の減少への評価(区分支給限度基準額対象外)が設けられる見込みです(2020年12月末時点)。厳しい競争下、収益が減少し赤字経営が見込まれ、資金繰りに懸念がある法人はなおのこと、要件や活用できる範囲を早期に理解し、実施の有無について素早く決断することが必要です。

 

トップが経営判断するにあたっての基準はさまざまです。例えば「サービス(顧客)」、「人材(職員・組織)」、「財務」などがあり、どの視点を重視しているかによって異なります。経営者は今後起きうる将来が未知数であるがゆえに、現在の多くの実情から現状を正しく把握をして、今後の方向性を決断し、その決断に覚悟を持つことを意味します。特に法人の資金繰りに関係する財務面リスクへの決断は、事業所管理者だけでは判断つきかねる場合も多く、法人の意思としてトップダウンで取組むことをお勧めします。

 

最近、介護報酬改定を前に法人内勉強会のご依頼が増えています。管理者層が介護報酬の改定内容を理解し、疑義解釈が明確になるまでに法人内で不明点を整理し早期対策に着手できるよう少しでも貢献できればと思います。

 

本ブログに興味を持った方は、メールにてご連絡ください。2021年3月までの期間、介護給付費分科会の事業別改定一覧をお送りします。

 

本コーナーの内容には筆者の個人的な見解が含まれています。ご意見、ご質問等は、介護経営戦略グループまでご連絡ください。

◆ 田中 律子 プロフィール ◆
2004年入社。以前のシステムエンジニアの経験より2000年に介護業界に関わったことをきっかけに、介護系事業所や介護請求システム会社を経由し、縁あって川原経営と出会い入社。福祉サービスに関する第三者現評価の業務を経て、現在は特別養護老人ホームや介護老人保健施設の戦略構想立案や経営改善、その他自治体からの研究受託などを行っている。医業経営コンサルタント資格保持者。
© Kawahara Business Management Group.