医療機関・福祉施設の経営を総合的に支援するコンサルティング・グループ

創立50周年記念 お問い合わせ Twitter
  • 文字の大きさ
  • 標準

ブログ

介護経営のエッセンス

第1回 環境変化に対応する

2020.08.14

皆様、こんにちは。川原経営総合センターのシニアコンサルタントの田中律子です。

 

 緊急事態宣言解除後(7月21日時点)、私がコンサルタントとしてお付き合いしている介護施設では、どの施設でも出入口が様変わりしています。来訪者は玄関で必ず呼び止められ検温・問診票への記載を経てようやく入館が認められます。施設によっては、自動ドアがインターフォン式になり、スリッパ殺菌ディスペンサーを新たに設置しています。こちらも訪問の際には、マスク着用、手洗いうがいの徹底等慎重に対応しています。

 

 介護事業は、高齢者の生活及び社会の維持のために不可欠な事業です。事業の継続を確保するための方策として、「新型コロナウィルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取り扱いについて」が第13報まで発表されています。

 

 さて、新型コロナ禍では、従来、高齢者にとって歓迎すべき利用者同士の交流が、感染リスクの懸念から避けるべき行動に変化しました。また、新型コロナ感染症に対するリスクへの危機感は、年齢や環境、疾病など人によってかなり異なります。今や感染対策への信頼性が、利用者、そして従事する職員を確保するためにも重要な視点となっています。感染リスクを限りなく軽減し、かつ、万一、感染者が発生した場合でもその影響を最小限に抑えられる体制が、サービスの質の根幹となり、利用者を確保するための最重要ポイントに変化しました。新型コロナ感染症対策は、長期的な目線での対応に切り替える時期を迎えています。

 

 新型コロナ感染症により、通所系事業が最も経営への影響を受けています。社会福祉法人や医療法人においては、在宅系事業が赤字体質であり弱点と捉えている場合が多く見受けられます。平穏時の弱点をそのままにしておくと、危機にはその影響が拡大しかねません。

 

 6月1日には通所から訪問への切り替えに加えて、2区分上位の報酬算定(以下、特例算定)などが設定されました。今回の特例算定で介護報酬が増加すれば、利用者の自己負担が増えます。介護施設では、感染リスク拡大防止のために、職員の自粛要請への休業補償や感染対策の備品・消耗品購入、web機器の導入など多様な諸経費が生じました。今回は、これらの費用について感染対策を名目に介護報酬上の加算がつけられますが、利用者に負担していただくことになります。利用者の負担が増えるから請求はできないという考えで、この長期戦となる経営危機を乗り切ることができるか、しっかり考えることが重要です。

 

 特例算定を実施するかは、方針の決断が必要です。組織によっては事業所管理者の権限ではなく、法人としての決定のもと実施する内容となります。通所系事業が赤字体質の場合は、日々の意思決定があいまいなまま目の前の業務に流されている可能性があります。そのため特例算定の決断を先延ばしにしている可能性が生じます。これを契機として在宅系事業の経営改善に目を向けてみましょう。
 webセミナー(無料、5分程度)で特例算定のシミュレーションをご紹介しております。合わせてご覧ください。

 

 

次回(来月)は、自事業の傾向を把握する①についてご紹介します。

 

本コーナーの内容には筆者の個人的な見解が含まれています。ご意見、ご質問等は、介護経営戦略グループまでご連絡ください。

◆ 田中 律子 プロフィール ◆
2004年入社。以前のシステムエンジニアの経験より2000年に介護業界に関わったことをきっかけに、介護系事業所や介護請求システム会社を経由し、縁あって川原経営と出会い入社。福祉サービスに関する第三者現評価の業務を経て、現在は特別養護老人ホームや介護老人保健施設の戦略構想立案や経営改善、その他自治体からの研究受託などを行っている。医業経営コンサルタント資格保持者。
© Kawahara Business Management Group.