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VOL.13 (新設)地域包括医療病棟入院料の収入効果は? 急性期一般入院料からの収入シミュレーションを実施
2024(令和6)年度診療報酬改定において、高齢者の救急受入と早期の在宅復帰を想定している入院料が新設されたことは大きなニュースになったのではないでしょうか。
川原経営総合センター 病院コンサルティング部では、この新設された地域包括医療病棟入院料が医業収入に及ぼす影響を確認するため、急性期一般入院料4を算定する医療機関を例にシミュレーションを行いましたので、その一部をご紹介します。
シミュレーションを行うに際しては大まかに以下の条件を設定しています。
- 取得可能な入院料等加算が不明なため、地域包括医療病棟入院料においては入院料のみ計算
- 比較時の急性期一般入院料4の点数は2022年度現在の点数を使用
- レセプトデータでは労災・自賠患者の比較が出来ないため、医事コンピュータによる統計抽出機能を用いて集計
- 収入効果の全体像を掴むため、全病床(今回は60床)を転換したと想定
① 全病床シミュレーションでは年間▲200万点以上の減収の可能性が!?
下図のように、シミュレーション設定病床(=全病床60床)を全て地域包括医療病棟入院料に転換した場合、200万点以上の減収見込みとなる可能性が分かりました(図表の拡大版はこちら)。
しかし、地域包括医療病棟入院料の算定ルール上、包括算定にすることで請求点数が患者個別に上下する特徴があることが想定されます。
そのため、更なる試算として、単月限定で患者ごとに請求点数がどのように変動するかをシミュレーションしました。
② 疾患や在院日数などの個別特性に応じて、試算結果に規則性が見られる
患者ごとにどのように請求点数が変動するかをシミュレーションしたところ、下図のように疾患や在院日数に応じて試算結果にある種の規則性があることが分かります(図表の拡大版はこちら)。
つまり、高額薬剤を多用する患者や包括範囲にある診療行為(投薬・注射・処置・検査・画像)の医療資源投入量が多い患者は、包括算定による収入効果が得辛い傾向にあるということです。
一方で、在院日数の比較的長い整形外科患者は包括算定による収入効果が高い傾向にあります。
③ シミュレーション結果を活用して・・・
今回のシミュレーションでは以下のような結果が得られました。
- 地域包括医療病棟入院料による増収効果は患者特性によって異なる
- 包括算定範囲にあたる投薬・注射・処置・検査・画像などの医療資源投入量が多い患者であるほど、増収効果は得辛い
この結果から、転換すべきは全病床ではなく、増収効果のある患者の規模に応じて転換する病床数を考える必要があります。
また、患者特性に応じた入院病床先決定などの緻密なベッドコントロール体制が敷けるのか、異なる入院料の病棟単位の届出による人件費の増加(配置看護職員の増加)など、実際の運用についても大きな課題があると考えられます。
いかがでしょうか?
基本点数が高い新設の入院料として増収効果が期待されやすいトピックスですが、その実、自院の対応する患者特性やそれを踏まえた入院受入体制など、課題となり得る点は多くあります。医療機関の皆様にとって病院経営のご参考となりましたら幸甚です。
*図の出所:厚生労働省資料

- ◆ 遠藤 愛 プロフィール ◆
- 病院コンサルティング部所属。社会福祉士・精神保健福祉士・介護福祉士。一般企業の営業職から訪問介護事業所での勤務を経て、二次救急病院(一般病棟・地域包括ケア病棟)の医療ソーシャルワーカーになる。様々な支援に関わるやりがいを感じながらも、「患者さん・家族の支援には病院の体制が重要」と痛感し病院経営支援の道を志した。現在は病院運営全般支援業務、病院機能評価受審支援を主に業務を行っている。
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