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ブログ

人事労務研究室ブログ

vol.24「新設された看護職員処遇改善評価料とは?②」

2022.09.13

皆さんこんにちは。川原経営の薄井です。

 

8月2日に開催された中央最低賃金審議会において、2022年度の地域別最低賃金改定の目安について答申されました。47都道府県がA~Dの4つのランクに分けられ、Aランク(千葉・東京・神奈川等)およびBランク(茨城・静岡・京都等)は31円引き上げられる見込みです。月160時間勤務した場合、約5,000円の賃上げに相当する大きな改定です。

最終的な地域別最低賃金は10月1日以降に発効される見込みですので、最新情報をご確認ください。
最新情報はこちらから確認できます。
厚生労働省ホームページ「賃金(賃金引上げ、労働生産性向上」

 

さて、本ブログでは今回も、目まぐるしく変わる経営環境の中で、お客様から寄せられる人事・労務に関するご質問をQ&A方式で解説いたします。

 

≪本日の相談≫

看護職員の処遇改善において算定できる評価料の計算方法や配分方法について、注意点やポイントを教えてください。

 

≪回答≫

ご質問ありがとうございます。
今回は、「看護職員処遇改善評価料(以下、評価料)について算定できる評価料の点数(区分)、評価料の配分方法」を解説します。

 

●算定できる評価料の点数(区分)について

算定できる評価料は、1日当たり、最低1点(評価料1)から最高340点(評価料165)まで165通りあります。

まずは次の計算式に則り、値【A】を算出します。

 

【計算例】

看護職員等の数:200名
延べ入院患者数:1,000名
値【A】=(200名×12,000円×1.165)/1,000名×10円=279.6

値【A】が「279.6」の場合、看護職員処遇改善評価料159となり280点を算定できます。

 

 

算出された値【A】に応じて、165種類の評価料のいずれかを算定します。
165種類の評価料は以下のとおりで、値【A】が高くなればなるほど、点数が高くなります。

出典:中央社会保険医療協議会 総会(令和4年8月10日)資料

 

※看護職員等の数及び当該保険医療機関の延べ入院患者数は直近3か月の各月1日時点における平均値を用います
※毎年、3・6・9・12月に上記の計算式を用いて計算し、評価料の区分に変更がある場合は、地方厚生局長等へ届け出る必要があります(ただし、前回届け出た時点と比較して、看護職員等の数、延べ入院患者数及び値【A】の変化が1割以内の場合は、変更の届出は行いません)

 

●評価料の配分方法について

算定した評価料は、基本給、手当、賞与等(退職手当を除く。)いずれかの賃金項目において配分することになり、以下の3つの要件を満たす必要があります。

①配分する際の賃金項目をあらかじめ特定したうえで行うこと
②特定した賃金項目以外の賃金項目(業績等に応じて変動するものを除く。)の水準を低下させてはならないこと
③評価料による賃金改善額の合計額の2/3以上は、基本給又は毎月支払われる手当の引上げにより改善すること

 

要件①は、賃金そのものに関係する内容のため、就業規則(賃金規程)において示すことが求められます。就業規則(賃金規程)において、いずれの賃金項目で賃金改善するのかを明確にし、就業規則を改定する必要があります。

 

要件②は、元々支給していた持ち出しの賃金を減額させてはならないことを指しています。今回の評価料は、あくまでも看護職員等の“処遇を改善”することを目的としています。現時点の処遇を基準として、評価料を配分することで処遇改善を実施することが求められています。

 

最も複雑なのが、要件③です。算定できる評価料の点数(区分)で示したとおり、評価料は看護職員等の職員数や1か月の延べ入院患者数によって決定されるため、月々の評価料が変動します。

 

合計額の2/3以上を使って配分する賃金項目(基本給又は毎月支払われる手当)について、2/3を下回らないギリギリの水準で改善額を設定し、看護職員等の人数が増える等で、評価額全体が増えてしまった場合は、2/3を下回ってしまうリスクがあります。

 

一方、2/3以上を使って配分する賃金項目(同上)について、改善額を高めに設定し、延べ入院患者数の増減によって、評価料の総額が下がってしまった場合は、評価料より配分額が多くなり、持ち出しが発生してしまうリスクがあります。当初設定した配分額の算式根拠を基準に、延べ入院患者数の増減により評価料の総額が下がらないよう、日々の患者数をコントロールする必要があります。

 

2/3以上となる賃金項目については、評価料の全体額と対象となる職種の職員数を踏まえて、慎重に検討する必要があります。評価料の増額がどの程度になるか、シミュレーションすることも重要です。

 

次回は、「看護職員処遇改善評価料(以下、評価料)について、計画書・実績報告書の作成や評価料を算定するメリットや注意点」を解説します。

 

 

 

◆ 薄井 和人 プロフィール ◆
人事コンサルティング部 課長。2014年入社。主な業務内容は病院・診療所・社会福祉法人の人事制度構築支援、病院機能評価コンサルティング、就業規則改訂支援、人事担当者のOJT業務など。各地の病院団体・社会福祉協議会から講演依頼がある。講演内容は人事・労務、労働関連法令の改正情報、服務規程(パワハラ・セクハラ)など。
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