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ブログ

人事労務研究室ブログ

vol.22「2022年労働関連法令はどう変わる?」

2021.12.28

皆さんこんにちは。川原経営の薄井です。

今年も残すところあと数日となりました。新型コロナウイルスもようやく終息が近づいてきたかと思えば、新たな変異株が発見されてしまい、楽しみにしていた年末のボクシング世界タイトルマッチも延期となってしまいました。

一日でも早く、来年こそは平穏な日常が戻ってくることを期待しています。

 

さて、本ブログでは今回も、目まぐるしく変わる経営環境の中で、お客様から寄せられる人事・労務に関するご質問をQ&A方式で解説いたします。

 

≪本日の相談≫

2022年も労働関係の法律が改正されると聞きました。情報収集が追い付いていないので、重要な内容を教えてほしいです。

 

≪回答≫

ご質問ありがとうございます。
さて、今回は2022年に変わる労働関連法令についてです。2019年の働き方改革関連法令の施行からはや3年弱が経過しました。同一労働同一賃金への対応含め、法改正への対応には一服感がある状況になりつつありますが、2022年以降も引き続き労働関連法令の改正は続きます。

 

本日は、2022年に施行される労働関連法令の中から、実務的に影響度が大きい内容をご紹介します。

 

1.改正健康保険法

施行日:2022年1月1日


〇傷病手当金受給者が一時的に就労した場合の支給期間の計算方法の見直し

(改正前)支給を始めた日から起算して1年6か月を超えない期間支給する
(改正後)支給を始めた日から通算して1年6か月間支給する


業務外の傷病が原因で就労することができない場合に支給される傷病手当について、従来の制度では、支給期間となる1年6か月の範囲内で、一時就労した期間があったとしても当該期間を含めて1年6か月を経過した場合、支給が終了していました。改正後は、一時就労した期間があった場合は、当該期間を除いて通算して1年6か月間、手当が支給されます。なお、2021年12月31日までに、既に傷病手当が支給されている職員は、この法改正が適用されるため、自法人の対象者を確認する必要があります。

 

2.改正育児・介護休業法

ここ数年、毎年改正されている育児・介護休業法ですが、2022年も新たな制度が創設されます。

施行日:2022年4月1日


〇有期契約職員の育児・介護休業取得について、“引き続き雇用された期間が1年以上”の要件を撤廃

(改正前)有期契約職員の育児・介護休業の取得要件(1)引き続き雇用された期間が1年以上(2)子が1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない

(改正後)上記の内、(1)の要件を撤廃


育児・介護休業を取得する場合、有期契約職員については、引き続き雇用された期間が1年以上の場合にのみ認められていました。法定以上の制度を整備していない限り、有期契約職員が育児・介護休業を取得するためには、1年以上雇用契約が継続していることが必要でしたが、今後は雇用契約の期間の有無にかかわらず育児・介護休業を取得させる必要があります。しかし、労使協定を締結することで、正職員と同様、入職1年未満の職員の取得を制限することは可能です。施行日が比較的近いため、育児・介護休業規程及び労使協定の内容を早めに確認する必要があります。

 

施行日:2022年10月1日


① 出生時育児休業制度(通称、産後パパ育休)の創設
対象期間:子の出生後8週間以内
取得日数:4週間まで(分割して2回取得可能。(2週間×2回等))
申出期限:休業の2週間前まで

② 育児休業(通常の育児休業)の分割取得が可能に
対象期間:原則、子が1歳(最長2歳)になるまで


本ブログでもご紹介した産後パパ育休が来年施行されます。子の出生後、8週間以内に、合計で4週間まで育児休業を取得することができます。この制度は通称の通り男性職員にのみ与えられた権利で、男性の育児休業取得が進んでいない現状を踏まえ、ポジティブアクションの考え方に沿った措置と言えます。

また、いわゆる通常の育児休業の取得について、現行制度では一度休業から明けて以降、再度取得することができませんが、法改正後は分割して取得することができます。また、1歳から1歳6ヶ月、1歳6ヶ月から2歳まで延長する場合、それぞれの期間の初日に育児休業を取得していることが延長の要件となっていましたが、法改正後は父母で育児休業を交代する等、初日に取得していなくても、途中から取得することが可能となります。

 

3.改正女性活躍推進法

施行日:2022年4月1日


〇労働者101人以上の事業主も一般事業主行動計画の策定義務対象に

(改正前)一般事業主行動計画の策定義務対象: 常時雇用している職員が301人以上の事業主
(改正後)一般事業主行動計画の策定義務対象:常時雇用している職員が101人以上の事業主


元々301人以上だった水準が、法改正によって101人以上へ引き下げられます。対象となる事業場は、自法人の女性の活躍に関する状況を把握します。必ず確認すべき項目は以下の通りです。

 (ア)採用した労働者に占める⼥性労働者の割合
 (イ)男⼥の平均継続勤務年数の差異
 (ウ)労働者の各⽉の平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況
 (エ)管理職に占める⼥性労働者の割合

上記項目を把握し、課題分析を踏まえて事業場としての目標を設定します。具体的な行動計画を策定し、全ての職員に周知したうえで外部へ公表します。毎年度実施することで数値の推移・取り組み状況を確認することができ、一定の要件を満たすことでえるぼしマークの認定を受けることができます。女性が多い職場のため、女性が活躍していることが大きな求職者像につながる場合もあります。

 

4.改正健康保険・厚生年金保険法

施行日:2022年10月1日


短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大
対象の事業所の規模や、短時間労働者の適用要件などが変わります。
(改正点)
〇適用事業所の拡大
(改正前)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所
(改正後)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所
〇短時間労働者の適用拡大
(改正前)雇用期間が1年以上見込まれること
(改正後)雇用期間が2カ月を超えて見込まれること(通常の被保険者と同じ)


現在、常時雇用している職員が501人以上の事業場において一定の要件を満たす短時間勤務職員を社会保険に加入させる必要がありますが、対象事業場の職員数が101人以上に拡大されます。また、従来雇用期間が1年以上だったものが、2か月以上に拡大されます。改正後の「一定の要件を満たす短時間勤務職員」の定義は以下のとおりです。

一定の要件を満たす短時間勤務職員とは、
 ①1週間の所定労働時間数が20時間以上
 ②当該事業場に引き続き2ヶ月以上雇用されることが見込まれること
 ③月額賃金が88,000円以上
 ④学生ではないこと

まずは、自法人で対象となる職員数及び人件費への影響額を試算する必要があります。医療・福祉業界は全職員に占める非正規職員の割合が高いため、人件費への影響額は無視できません。影響額が大きい場合は、職員との雇用契約内容を再考する必要があります。なお、100人以下の場合でも、2024年10月に50人超の要件が下がるため、これを機に対応方法を検討するのも一案です。

 

実務への影響が大きい改正内容をご紹介しました。施行時期から逆算して、計画的な対応を心がけましょう。

 

◆ 薄井 和人 プロフィール ◆
2014年入社。主な業務内容は病院・診療所・社会福祉法人の人事制度構築支援、病院機能評価コンサルティング、就業規則改訂支援、人事担当者のOJT業務など。各地の病院団体・社会福祉協議会から講演依頼がある。講演内容は人事・労務、労働関連法令の改正情報、服務規程(パワハラ・セクハラ)など。
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