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人事労務研究室ブログ

vol.18「週休3日制ってどんな制度?」

2021.07.13

皆さんこんにちは。川原経営の薄井です。

 

先日、弊社が入居しているビルで職域接種が始まり、1回目のワクチン接種を終えました。

心配していた副反応もさほどなく、打った側の腕に筋肉痛のような痛みが数日間続く程度でした。お客様からは“2回目の接種後の方が副反応は強いですよ”とうかがっています。本番はここからですね。2回目も頑張ります。

 

さて、本ブログでは今回も、目まぐるしく変わる経営環境の中で、お客様から寄せられる人事・労務に関するご質問をQ&A方式で解説いたします。

 

≪本日の相談≫

地元の一般企業が週休3日制を導入したそうです。

医療福祉業界ではあまり耳馴染みのない制度ですが、どのようなものでしょうか。

メリットやデメリットを教えてください。

≪回答≫

ご質問ありがとうございます。今回のテーマは週休3日制です。

 

週休3日制とは、週の所定休日を3日と定める制度を指します。

現行の労働基準法では、1日の所定労働時間は8時間、週の所定労働時間は40時間と定められています。このため、40時間÷8時間=5日分となり、1週のうち残りの2日間が休日となる勤務体系が、多くの職場で採用されています。

 

週休3日制を導入する場合は、週の所定労働時間をどうするかを考える必要があります。

 

① 1日の所定労働時間数を変更せず、導入する場合

1日の所定労働時間が8時間のまま週休3日制を導入し、週4日勤務にしてしまうと、週の所定労働時間が32時間(8時間×4日)となってしまい、総労働時間数が減ってしまいます。

総労働時間数が減るにもかかわらず、給与を維持するとなると法人側に大きな負担がかかってしまいます。医療福祉業界は、人員配置が収入に直結しますので、とりわけ看護師や介護職員に適用させる場合は現実的ではありません。

もし、週の所定労働時間を32時間に変更する場合は、同時に賃金体系の変更(基本給のベースダウン・賞与支給月数の減少等)や、常勤比率が減る分の新規採用と合わせて検討する必要があります。

 

 ② 1日の所定労働時間数を変更して、導入する場合

週の所定労働時間は維持した状態で、週4日勤務にする場合、1日当たりの所定労働時間を変更する必要があります。週40時間勤務の場合は、1日当たりの所定労働時間を10時間にすることで10時間×4日=40時間となり、週の所定労働時間を維持することができます。ただし、この場合1日当たりの法定労働時間を超えることになるため、“変形労働時間制”を導入する必要があります。

総労働時間数は変わらないため、人員配置上の影響もなく、賃金体系を変更する必要もありません。

 

① ②それぞれの経営者としてのメリット・デメリットは以下の通りです。

 

法人にとってのメリットは求人応募者が増える可能性があるという点です。

近年、働き方改革の流れの中で、休日日数も重要な指標となっています。単純計算で、年間52日休日が増えるため、求人応募者数の増加は期待していいでしょう。

また、“週4日勤務で同じ成果を上げなければ!”という職員の意識から、生産性が向上し業務改善につながり、結果的に残業代の減少や業務負担の軽減にもつながります。

 

一方で注意しなければならないのは、コミュニケーション不足です。ただでさえ、24時間365日運営している施設もある中で、夜勤と日勤で上司と部下のすれ違いが続いてしまう…というのはよくある話です。休日を増やしつつ、管理職が万遍なく職員と接することができるように、より一層、シフトを管理することが重要になります。

 

週休3日制の対象者の総労働時間数が減る場合は、非常勤の職員を採用するなどの対応も検討できます。しかし、職員数や職員数の増加に伴う労務管理の工数が増え、人件費や業務負担が増える可能性があることには注意しなければなりません。

 

また、職員にとってのメリットは、私生活とのバランスが取りやすくなることです。家族との時間を作りやすくなり、“ここで働き続けても大丈夫”という安心感にもつながります。

 

週の所定労働時間が40時間となる場合は、1日当たりの身体的な負担も大きくなります。シニア人材や産後間もない女性職員は、体力的な不安を抱えているため、一定のペースで、週休2日で勤務したいと考えている方も多いです。よって、全職員に一律で適用させるのではなく、対象を希望者のみに絞ることも一案です。

 

法人全体で一斉導入してしまうと、現場が混乱する恐れもあります。正しい運用ができないと、シフトの組み方を誤り、余分な残業が発生することや、有給休暇の取得率を低下させてしまうこともあるでしょう。

夜勤がなく、残業が少ない部署から適用を開始するなど、順次適用を拡大していくことも検討する必要があります。

 

 

メリットも多い週休3日制ですが、注意しなければならない点があることもお分かりいただけたと思います。“制度を導入することが目的”になるのではなく、“制度を導入して何を実現したいのか”を明確にして、制度設計することが大切です。

 

 

◆ 薄井 和人 プロフィール ◆
人事コンサルティング部 課長。2014年入社。主な業務内容は病院・診療所・社会福祉法人の人事制度構築支援、病院機能評価コンサルティング、就業規則改訂支援、人事担当者のOJT業務など。各地の病院団体・社会福祉協議会から講演依頼がある。講演内容は人事・労務、労働関連法令の改正情報、服務規程(パワハラ・セクハラ)など。
© Kawahara Business Management Group.