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ブログ

人事労務研究室ブログ

vol.17「男性も産休を取れるようになるの?」

2021.06.14

皆さんこんにちは。川原経営の薄井です。

 

陸上競技の山縣亮太選手が男子100メートル走で9秒95の日本記録をマークしました。

サニブラウン選手が保有していた9秒97を0秒02更新です。ここ数年、けがで悩まされていた山縣選手にとって、オリンピックイヤーでの大復活劇となったのではないでしょうか。数字で結果が出る陸上競技は、厳しいスポーツでもありますが、努力が数字で実感できるところが醍醐味でもあります。

 

さて、本ブログでは今回も、目まぐるしく変わる経営環境の中で、お客様から寄せられる人事・労務に関するご質問をQ&A方式で解説いたします。

≪本日の相談≫

先日、ニュース番組で男性を対象とした産休制度ができると聞きました。法人として何をすべきか、教えてください。

≪回答≫

ご質問ありがとうございます。今回は男性の産休制度について内容を確認します。

 

男性が産休?と思われる方もいらっしゃるかも知れません。

産前産後の期間に休業する産休制度は、出産する“女性”職員が、出産予定日以前の42日間(多胎妊娠の場合は98日)、出産日後56日間休業する制度を指しますが、令和3年6月3日に“男性”の育児休業の取得を促す改正育児・介護休業法が衆院本会議で可決、成立しました。(厳密には、出産後育休という制度のため、法律上は育児休業として取り扱われます。)

 

今回可決された男性版の産休制度は、2022年10月の施行を予定しており、“産前”休業はなく、“産後”の休業のみです。

 

今回の法改正によるポイントは以下の通りです。

子が生まれてから生後8週間以内に、最大4週間の休業を2回に分けて取得することができるようになります。

例えば里帰り出産の場合などに、出生後・退院時に合わせて2週間、その後母子が里帰りから自宅に戻るタイミングに合わせて2週間といった取得の仕方も可能です。

必ずしも分割して取得しなければならない訳ではなく、4週間分を一括で取得することもできます。

対象期間中は女性版と同様、休業前賃金の67%分が給付金として支給され、合わせて社会保険料も免除されるため、手取り収入の約8割が保障されます。

 

女性職員は、出産予定日から42日前に休業に入りますが、男性職員の場合、“実際に生まれた日”から権利が発生するため、予定日前後での業務量の調整や業務内容の引き継ぎが重要です。少なくとも、出産予定日が属する月(月末月初の場合はその前後の月も含む)のシフト作成時は、夜勤のタイミングをずらす・オンコール体制から外す等の対応が求められます。

 

看護職・介護職等大人数部署の場合は、振替等の対応がし易いですが、少人数部署(技師(技士)や相談員等)は振替等が難しいケースもありますので、地域の施設やグループ法人間で連携体制を構築しておく必要があります。

 

男性職員の子育てに関する権利を時系列にまとめると以下の通りです。

 ※1 両親がともに育児休業を取得する場合に限る(パパ・ママ育休プラス)
 ※2 保育園に入れることができなかった場合等に限る。

 

男性職員の子育ては、収入面でのサポート以上に所属する法人の協力体制が何より大切です。働き手寄りの法改正が続く一方で、法人側の制度理解が追い付いていないのが現状です。

 

育児は、子の年齢によって利用できる制度の内容が決まっています。今何をしなければならないかも重要ですが、職員の子の年齢を踏まえ、その後の制度利用も見越した人員配置や新規採用計画の立案をする必要があります。

 

職員から請求されて制度利用へ促すのではなく、法人側から歩み寄る姿勢を作ることが求められます。

 

※なお、男性版の産休制度は、法律が公布されてから1年6ヵ月以内に施行される予定です。
今後も動向を確認する必要があります。

 

 

◆ 薄井 和人 プロフィール ◆
人事コンサルティング部 課長。2014年入社。主な業務内容は病院・診療所・社会福祉法人の人事制度構築支援、病院機能評価コンサルティング、就業規則改訂支援、人事担当者のOJT業務など。各地の病院団体・社会福祉協議会から講演依頼がある。講演内容は人事・労務、労働関連法令の改正情報、服務規程(パワハラ・セクハラ)など。
© Kawahara Business Management Group.