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人事労務研究室ブログ

vol.15「新入職員研修は残業代が発生する? 」

2021.04.09

皆さんこんにちは。川原経営の薄井です。

水泳の池江璃花子選手の東京オリンピック出場が決まりました。
池江選手が白血病を公表したのが2019年2月。オリンピック出場どころか生命さえ危ぶまれる時期があった中での復活劇は、日本に大きな勇気や希望を与えたのではないでしょうか。オリンピック本番で活躍する姿を見るのが楽しみですね。

 

さて、本ブログでは今回も、目まぐるしく変わる経営環境の中で、お客様から寄せられる人事・労務に関するご質問をQ&A方式で解説いたします。

 

≪本日の相談≫

毎年4月に新入職員を対象としたオリエンテーションや研修を開催しています。ある職員から「この研修は残業代が出ますか?」と質問されました。通常業務が終了した後に実施しているため残業代を支払う必要はないと思っていたのですが、支払わなければならないのでしょうか?

 

≪回答≫

ご相談ありがとうございます。今回は残業代の支給要否についてご説明します。

4月に入り、新入職員を対象に研修やオリエンテーションを実施している法人が多いのではないでしょうか。開催方法は様々で、以下のような例が挙げられます。

 

・通常業務時間内で実施するケース

・業務終了後に実施するケース

・休日を使って実施するケース 等々

 

特に注意が必要なのが、今回のご相談内容のように業務終了後や休日を使って実施するケースです。業務時間外に研修を実施している場合は、“その研修の受講を法人として義務付けているか否か”で労働時間に該当するかの判断が異なります。

 法人として受講を義務付けている場合は労働時間に該当するため、業務時間外に実施している場合は残業代を支給する必要があります。(通常業務の時間内で実施する場合は、研修の受講そのものに対して賃金を支給していることになるので問題ありません。)

根拠となる法令は以下の2つです。

 

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定・厚生労働省)

 

労働基準法第32条・36条関係通達昭和26年1月20日 基収第2875号

 

研修の参加を義務とするか否かについては法人により異なると思いますが、とりわけ新入職員を対象とした研修やオリエンテーションは、受講しなければ通常業務に支障をきたしてしまうため実質的に参加を義務付けているのと同義であると言えます。

 

また、参加を義務付けていないとしても、例えば研修の受講率が人事考課の結果に反映される等の扱いが慣例的に行われている場合は、実質的に参加を義務付けていると言えるでしょう。

研修の他にも、新入職員を対象とした行事が労働時間となるのか考えたいと思います。

 

新入職員を対象とした行事の取り扱いは法人によって様々です。

 

場合によっては職員から、「これは労働時間なのではないか?」と質問されることもあると思いますが、その際はご紹介したガイドラインや通達を踏まえて判断する必要があります。

 

「○○は労働時間」、「△△は労働時間ではない」等と杓子定規に判断するのではなく、実態を確認して柔軟に対応することを心掛けてください。

 

判断に迷われた際は、気兼ねなくお問い合わせください。

 

◆ 薄井 和人 プロフィール ◆
人事コンサルティング部 課長。2014年入社。主な業務内容は病院・診療所・社会福祉法人の人事制度構築支援、病院機能評価コンサルティング、就業規則改訂支援、人事担当者のOJT業務など。各地の病院団体・社会福祉協議会から講演依頼がある。講演内容は人事・労務、労働関連法令の改正情報、服務規程(パワハラ・セクハラ)など。
© Kawahara Business Management Group.