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人事労務研究室ブログ
VOL.12「何が変わる?2021年の改正労働関連法令」
あけましておめでとうございます。川原経営の薄井です。
昨年は、新型コロナウィルスとの闘いの1年といっても過言ではないほど、日々感染状況等に関する報道がなされていました。欧米諸国では、ワクチンの接種が始まっている一方で、変異種なる新たな脅威も生まれています。
東京オリンピックの開催方法も未だ見通しが立っていない中、やっとの思いでつかみ取った観戦チケットを握りしめて、大好きな野球を観戦できる日は来るのか?とやきもきしているのは私だけでしょうか。
さて、本ブログでは今回も、目まぐるしく変わる経営環境の中で、お客様から寄せられる人事・労務に関するご質問をQ&A方式で解説いたします。
≪本日の相談≫
ここ数年、毎年のように労働関係の法律が改正されていて、何がいつ変わり、どう対応していいのか分かりません。今年施行される法律があれば、教えてください。
≪回答≫
2021年も労働関係の法律がいくつか施行されます。
今回はその中から、重要な改正内容を中心に、
◆育児・介護休業法
◆障害者雇用促進法
◆高年齢者雇用安定法
についてご紹介します。
改正される法律:育児・介護休業法
施行日:2021年1月1日
今まで、1日又は半日を単位とした取得のみであった子の看護休暇及び介護休暇(以下、看護休暇等)について、時間単位での取得が可能になります。これにより、今までは1日当たりの所定労働時間が4時間以下の労働者の取得は適用除外でしたが、日雇い労働者を除いて、全ての労働者が時間単位での取得が可能になります。
就業規則の改定及び職員への(特に該当者に対しては迅速に)説明はもちろんですが、加えて、時間単位での年次有給休暇の付与を検討すると良いでしょう。なぜなら看護休暇等の取得そのものは法律で定められていますが、取得日の給与を保障するものではないため、取得日に無給の場合は、年次有給休暇の取得が優先されるケースがほとんどだからです。
年次有給休暇は、原則1日又は半日単位でしか取得することができないため、時間単位での看護休暇等の取得が認められた場合でも年次有給休暇と上手く組み合わせて活用することが困難であり、労働者側からすると有給を消化することで損をした気分になるでしょう。このような場合に労使協定を結ぶことで、5日を超えない範囲での時間単位の年次有給休暇の付与が認められ、より柔軟に看護休暇等を取得しやすくなります。
ただし、時間単位の年次有給休暇の取得はいわゆる5日義務の日数にはカウントできないため注意が必要です。
改正される法律:障害者雇用促進法
施行日:2021年3月1日
医療法人・社会福祉法人等を含む民間企業における障害者の法定雇用率が、2.2%から2.3%へ引き上げられます。これにより、障害者を雇用する必要がある法人規模が常時雇用労働者45.5人以上から、43.5人以上へ拡大されます。
新たに適用対象となる43.5人以上45.5人未満の法人は、障害者を採用するに当たって、①職種、②雇用形態、③業務内容を考え、採用計画の立案→募集→応募→選考→採用とステップを踏んでいく必要があります。
“採用すれば完了”ではなく、継続して雇用を維持する必要がありますので、採用した方が働きやすい環境を継続的に提供しましょう。
改正される法律:高年齢者雇用安定法
施行日:2021年4月1日
これまでは、雇用する労働者の65歳までの“雇用機会” を確保する措置を講じる義務がありましたが、改正後は上記義務に加えて、70歳までの“就業機会”を確保することが、努力義務として課されるようになります。
今回の改正ポイントは、年齢の引き上げではなく、講じるべき措置の内容が“雇用措置”に加えて、“就業措置”という表現も加わった点です。いわゆる直接的な雇用契約を義務付けるものではなく、①継続的業務委託制度や、②継続社会貢献活動制度の導入も含めて就業する場を提供することが求められます。例えば業務委託契約として清掃員・運転士等として契約する、法人として実施している有償ボランティア活動に参加してもらう等が挙げられます。
その他にも従来通りの定年の引き上げ、継続雇用制度の導入、定年制の廃止も就業機会を確保する方法として認められています。
あくまでも努力義務の範囲内ですので、必要に応じて就業規則を改定する程度にとどまりますが、法人によってはシニア人材が施設運営のカギを握っている場合もあるため早めの対応が必要です。(シニア人材の人事管理についてはこちらをご覧ください。)
今回ご紹介した改正情報以外にも、労働者派遣法やパートタイム・有期契約労働法などが改正されます。
パートタイム・有期契約労働法はいわゆる同一労働同一賃金関係の改正内容です。本年中に、このブログを通じて情報提供したいと思います。
“うちは就業規則を変えたばかりだから大丈夫”と過信するのではなく、一つ一つの改正情報を照らし合わせて、何をすべきか優先順位付けをしながら確実に対応しましょう。

- ◆ 薄井 和人 プロフィール ◆
- 人事コンサルティング部 副部長。2014年入社。主な業務内容は病院・診療所・社会福祉法人の人事制度構築支援、病院機能評価コンサルティング、就業規則改訂支援、人事担当者のOJT業務など。各地の病院団体・社会福祉協議会から講演依頼がある。講演内容は人事・労務、労働関連法令の改正情報、服務規程(パワハラ・セクハラ)など。
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