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人事労務研究室ブログ

どうする?最低賃金への対応

2019.10.31

皆さん

大変、ご無沙汰しております、川原経営の薄井です。

最近更新していないな…と思っていたらあっという間に4か月経過してしましました。

毎月更新、頑張ります。

 

さて、今年は働き方改革元年とも言われ、旬な話題が豊富です。

旬な話題と言えば最低賃金の引上げ・消費税率が10%に改定されてから、すでに1か月が経過しました。

今月、来月はこの2つの内容について、書かかせていただきます(まずは2か月連続更新頑張ります)。

 

今月は最低賃金の解説です。

2019年の10月1日に最低賃金が改定されています。

2016年の改定で引き上げ率の全国加重平均が3%を超え、今年度の3.09%を含めると4年連続で3%超の引上げとなりました。

パーセント表示だとイメージしづらいかも知れませんが、自法人の例年の定期昇給率と比較するといかに高いか実感して頂けると思います。

昇給率の計算方法:(定期昇給後の基本給−定期昇給前の基本給)/定期昇給前の基本給

 

弊社が担当させて頂いているお客様の定期昇給率の平均が1.4~1.6%ですから、やはり最低賃金の3%を超える引上げはインパクトが大きいです。余談ですが、もし定期昇給率が経常的に2%を超えている場合は、将来的に人件費圧迫する可能性が高く、早急に賃金制度を検討(見直す)する必要があります。

 

時間給の計算方法は月給職員、時給職員でそれぞれ異なりますから、正しい計算方法を知り、毎年改定前に対応状況を確認する必要があるでしょう。

今回は誤解を招きやすいいくつかのパターンごとに対応方法をご紹介します。

 

ケースⅠ:複数の都道府県で事業所を有する場合

近年、事業展開が活性化するこの業界で、都道府県を跨ぐケースも少なくありません。例えば埼玉県と群馬県は隣接していますが、両者の最低賃金には91円もの開きがあります(埼玉県が926円、群馬県が835円。常勤職員の年収ベースで約180,000円の差となる)。

 

同一法人内で、異なる最低賃金が適用されることになりますが、例えばこの法人の、群馬県にある事業所で勤務するAさんが、埼玉県の事業所にヘルプで1日勤務した場合、その日の賃金はどの様に計算するかが問題となります。

結論から申し上げますと、原則として『雇用契約書における勤務先』をベースに考えますので、Aさんの場合は、たとえ1日埼玉県で勤務しても群馬県の最低賃金が適用されます。

但し、この様な法人では多くの場合、“異動”が発生します。異動がある場合は、年度によって、又は年度中に適用される額が変わることになり、管理が煩雑になってしまいます。よって、“額が高い都道府県”に合わせて賃金制度を設計する等の配慮が求められます。

 

但し、一律で高い賃金制度を適用させてしまうと人件費への影響も大きいですから、①異動が発生する職員には額が高い都道府県に合わせた制度を、②発生しない職員には“地域限定職”の制度を適用させ、各都道府県の最低賃金に合った制度を適用させる等で対応すると良いでしょう。

 

ケースⅡ:みなし残業代を支給している場合

事務職や現場のリーダー層に対して、みなし残業を設定している場合があります。みなしとなる残業時間を設定する際、総支給額から逆算して、残業代を設定するケースが散見されますが、残業時間数が長くなる分、残業時間を含む総労働時間数が長くなり、時間単価が低くなる恐れがあります。この場合は、『みなしの残業代と時間を除いた、本来の固定的な月給を、(残業時間を除く)所定労働時間で除して時間単価を計算して、最低賃金を超えているかどうかを判断』します。

 

上記の場合、同じ210,000円という総支給額から、みなし残業時間数を逆算して決定した2つの事例です。適法となるケース(左)はみなし残業代を除く基本給(160,000円)を、所定労働時間数(160時間)で割ると、時給単価1,000円となり、千葉県の最低賃金を超えています。違法となるケース(右)では、同様の計算をすると875円となり、最低賃金を下回っていることが分かります。

また、時間外労働の上限規制が適用されていますので、(中小規模法人は2020年4月から)たとえ業務過多の部署であったとしても、そもそもの残業時間数として、60時間を超える設定はいかなる理由があろうと禁止されます。

 

最低賃金への対応は、賃金制度を見直す良い機会と捉えることもできます。人件費への影響を最小限に抑え、かつ人材の定着を図るためにどの様な制度にすべきか…ブログではこの辺りまでにしたいと思います。

個別のご相談をご希望される方は、担当者までご連絡下さい。

日本全国どこでもお伺いします。

 

また、当社の会員ページから閲覧できる情報誌かわらばんでは、最低賃金に関するその他の計算方法をご紹介(2019年11月号掲載)しています。内容にご興味のある方は、ホームページの問い合わせフォームよりご連絡下さい。

 

【参考資料】

厚生労働省:地域別最低賃金の全国一覧

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/

 

◆ 薄井 和人 プロフィール ◆
人事コンサルティング部 課長。2014年入社。主な業務内容は病院・診療所・社会福祉法人の人事制度構築支援、病院機能評価コンサルティング、就業規則改訂支援、人事担当者のOJT業務など。各地の病院団体・社会福祉協議会から講演依頼がある。講演内容は人事・労務、労働関連法令の改正情報、服務規程(パワハラ・セクハラ)など。
© Kawahara Business Management Group.