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ブログ

保育所経営ブログ

VOL.82「最低賃金改定時における給与の見直しについて」

2022.09.16

皆さん、こんにちは!
川原経営の神林です。

 

先日帰宅中に、最寄り駅の駅前広場で小さなお祭りが開かれていました。
昨年と一昨年は中止だったので、三年ぶりに規模を縮小して行われたようです。
浴衣を着て駅の方に向かう近所の子ども達はとても嬉しそうでした。

このような伝統行事を目にすると、
せわしない日常であっても季節の変化を感じることができますね。

 

さて、2022年度の最低賃金の改定が発表され、
全国加重平均で31円(3.3%)引き上げ、
961円を目安とする方針が示されました。
例年に倣うと、10月からの見直しが想定されます。

 

今回は、「最低賃金」が引き上げられた際の職員の給与の見直しについて、
確認していきます。

 

最低賃金の対象・非対象

 

最低賃金の計算根拠に含められる賃金とそうでないものがあります。

時給や基本給が最低賃金を下回っていたら直ちに違法となるのではなく、
対象となる賃金の総額をもとに判断されます。

 

 

※「皆勤手当」や「家族手当」は、出勤状況や家族の有無によらず全職員を対象とする場合、最低賃金の対象となり得ます。

※「処遇改善加算」の分配によって最低賃金を満たすことは適切ではないとされており、最低賃金を満たした上でさらなる給与改善を行う必要があります。

 

最低賃金を下回る職員が発生した際の改善方法

仮に最低賃金が「30円」上がった場合に、
時給ベースで一律に30円ずつ、
給与を引き上げなければならないものではありません。

「最低賃金を下回らない」ことがルールですので、
単純に下回る職員の給与を引き上げれば、最低賃金法上は問題ありません。

 

ただし、この一部の職員の賃上げにより、
職員間の給与のバランスが崩れて(職位間で給与水準が逆転して)
しまうことなども想定され、一般的には以下のような措置を取ります。

 

ベースアップ

給与テーブルやパートタイマーの時給水準を一斉に引き上げる措置です。
最もわかりやすく、職員にとって有利な方法ですが、
法人(・園)全体の総額人件費が膨れ上がるリスクがあります。
この方法を取る場合、代わりにボーナスや一時金の支給水準を引き下げるなどの調整も併せて検討するのが良いでしょう。

 

初任給の引き上げ(部分的なベースアップ)

最低賃金を下回る可能性があるのは、以下の対象が想定されます。

A.年齢が若い方
B.在職期間が短い方
C.事務職・調理員・保育補助など、有資格者以外の方

 

それに対して、対象別に以下のような部分的な改定を行います。

A´.新卒者の初任給水準を引き上げる
B´.上記に関連し、中途採用者の初任給水準を引き上げる
C´.対象職種の初任給水準の引き上げまたはベースアップ

 

この方法によると、総額人件費は全体的に抑制することができます。
ただし、初任給水準の引き上げは、それ以前に入社していた職員が不利(給与の逆転など)になってしまうため、併せて次の措置を検討します。

  • ボーナス等の支給水準に差を設ける
  • 翌年度以降の定期昇給額に差を設ける
  • 退職金の支給基準に差を設ける
  • 給与逆転してしまう職員についても、そうならない範囲まで給与を引き上げる

 

このように、給与の見直しは全体の財務バランスや職員間のバランスを考えながら、
実施する必要があります。

職員にとって大切な給与の見直しは、
場当たり的な対応ではなく、計画的に進めるようにしましょう。

 

 

◆ 神林 佑介 プロフィール ◆
人事コンサルティング部 副部長。2012年入社。保育士・社会福祉士。保育園、そして老人ホームで働いた後、オーストラリアへ留学。帰国後、会計や経営コンサルティングの仕事は未経験ながら、コンサルという仕事への憧れ、そしてホームで働いた現場経験を活かせるのではないかという想いをもって、この世界へ飛び込んだ。以来、介護・福祉施設の経営コンサルタントとして主に法人開設支援などを行なっている。
© Kawahara Business Management Group.