医療機関・福祉施設の経営を総合的に支援するコンサルティング・グループ

創立50周年記念 お問い合わせ Twitter
  • 文字の大きさ
  • 標準

ブログ

保育所経営ブログ

Vol.28「業務改善に取り組もう②」

2018.07.02

ブログを書き始める前に。

この度の大阪北部地震でお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

現地の保育園で働く保育士の皆さんは、ご自身の生活も落ち着かれないところ、子どもたちの心のケアや保護者の方々の不安を少しでも軽くしようと、いつも以上に奮闘されていることと思います。

天候も梅雨が明けきるまでは、暑かったり寒かったり不安定な状態が続きますので、どうぞ無理のないようお体に気を付けてお過ごしください。

さて、今回からは保育所の業務改善について、具体的なお話しを進めていきたいと思います。

保育士は業務の何に負担を感じているのか

保育士の業務負担については、さまざまなところで調査研究が行われていますが、どの調査でも、常にワーストの上位にあがるのは「事務仕事(記録や報告)」「会議」、その次に、「保護者への対応」や「掃除」「玩具の消毒」「行事の準備」が続きます。

主に、直接保育にかかわらない業務に負担を感じられているようです。

だからといって、保育にかかわる業務が負担ではないと思ってしまってはいけません。

「負担は多いけれど、子どもたちのためにしっかり努めなければ」

「保育が好きでこの仕事を選んだのだから、多少の負担は仕方がない」

そう思いながら、日々頑張っている保育士の気持ちはしっかりと汲みつつ、

保育に直接関わる業務であっても、負担が生じている部分があるのではないかという視点をもって、業務改善について考えていくことが大切です。

本質のところを改善しなければ業務の負担は軽減しない

国では業務の負担軽減に向け、ICT化の推進のほか、清掃など保育の周辺にある業務を担う人や保育補助者の雇上げに必要な経費の補助等を打ち出しています。

当園の子どもの健康状態の把握、保育計画の作成、職員のシフト管理だけでなく、最近では、保護者との情報共有や写真の販売、午睡チェックなど、さまざまなソフトウエアや機器が登場してきています。

保育補助者であれば子育て支援員研修を修了された方、清掃などであればその道に精通された方がたくさんおられますので、そうした方々が保育園に来てくれれば、とても心強いと思います。

そう考えると、「こうした制度を活用すれば、すぐに業務改善できる!」ということになるのでしょうか?

ここが問題なのだと思います。

ソフトや機器を導入しようという話しになれば、使い方やルールを決めることはもとより、操作方法を覚えるために時間や労力が必要となってきます。

導入した当初は、きちんと活用できていない場合を想定して、当面の間は従来どおりの方法を併用して行う必要があります。

保育補助者や清掃の方には、子どもの育ちや保護者に対する理解や園内のルール、保育実践との関わり方などを共有するとともに役割分担をしっかりとしておかなければ、

保育実践に影響を与えてしまうばかりか、思わぬ事故やクレームを引き起こしてしまいかねません。そのための時間や労力を注ぐ必要があります。

それが一時的なものであればよいのですが、もしそうでなかったら・・・。

ますます保育士に負担がかかってしまう結果に陥ってしまうのではないかと心配しています。

そんな思いを抱いている私ですので、今回はこうした切り口を使って端的にお話しするのでなく、

根本的なところから、少し丁寧に始めてみたいと思います。

そもそも「業務改善」をする目的とは何か?

業務改善とは、一言でいえば「業務を今よりも良いものにすること」です。

何をより良くしていくのか?

業務改善の目的は次のとおりです。

先日、とある保育園の園長先生とした会話をご紹介します。

園長先生:「全職員を外部研修に参加させることはなかなか難しいので、うちの園では、参加した職員がいれば、後日他職員に報告してもらう機会を作っています」

久保田:「それは素敵なことですね。どのように行っているのですか?」

園長先生:「まずは『研修参加報告書』を作成してもらい主任や園長が確認して、次に『研修に参加して(参加報告書概要版)』を作成してもらい全職員に回覧します。それから『研修成果の活かし方(提案書)』というもので、日頃の保育実践にどのように活かしていくかを提案としてまとめてもらい、職員会議で発表してもらいます」

久保田:「研修の成果が園全体に活かされるよう工夫されているのですね。でも、作成書類が3種類あると、職員さんは大変なのではないですか」

園長先生:「そうなのです。だから皆、外部研修に行きたがらなくて・・・」

 先ほどの、業務改善の目的と照らし合わせてみて、皆さんいかがでしょう。

 内容の多い少ないや細かさはあるものの、研修に関する内容はほとんど一緒のはずです。

それなのに種類の異なる書類を作るということは、時間も労力も要しますし、

別々に何度も作ることで記載内容に間違いが生じたり、誤った報告をしてしまう可能性もあります。

この事例でもっとも重要なのは、

「研修に参加した職員から考える」と、

・研修を通じて自分自身が成長できた(評価してもらえるかもしれない)

・報告を通じて皆に知識や情報を還元することができた

・自分も含め皆が知識や情報を持つことで、子どもたちにさらに良い保育が提供できる

「周囲の職員から考える」と、

・研修に参加した職員がいなかった分業務は大変だったけれど、役に立つ知識や情報を分けてくれたので良かった

・今度は自分も参加したい(成長したい)

このあたりが満たされてこないと、研修に参加させる効果も、報告書をつくる意味もなくなってしまいます。

この事例では、書類に関しては、できるだけ少ない時間と労力で、必要な事柄を伝えるべき相手に正確に伝える視点が大切だということをお伝えして、現在、報告の目的や書類に記す内容、発信方法などを皆で話し合うことにしました。

業務改善ができないことを「人手不足」のせいにしない

業務改善のお話しをすると、必ずといってよいほど「人手不足だから」と言った声が返ってきます。

確かに保育業界の人手不足は喫緊の課題ではありますが、それは保育園に限ったことではなく、生産人口が減少し続けている今の日本にあっては、どの産業も同じ悩みを抱えています。

限られた人員の中で、可能な限り効率的に業務を進めていく工夫をしていくことが、どの産業にも求められる時代になってきました。

また、たとえ職員が増えたとしても、ポイントにあるような事柄を根本的に見直さない限りは、業務に追われる状態は常に続くのだということを頭の隅に置きながら、業務改善に向けた取り組みを進めていきましょう。

次回は、実際の進め方と進める際の留意点についてご紹介します。

久保田真紀

◆ 神林 佑介 プロフィール ◆
人事コンサルティング部 副部長。2012年入社。保育士・社会福祉士。保育園、そして老人ホームで働いた後、オーストラリアへ留学。帰国後、会計や経営コンサルティングの仕事は未経験ながら、コンサルという仕事への憧れ、そしてホームで働いた現場経験を活かせるのではないかという想いをもって、この世界へ飛び込んだ。以来、介護・福祉施設の経営コンサルタントとして主に法人開設支援などを行なっている。
© Kawahara Business Management Group.