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医療機関・福祉施設でのコミュニケーション向上委員会ブログ

Vol.10「『決断』と『意思決定』」

2019.11.15

 先日、日本ではじめて国連難民高等弁務官を務められた緒方貞子さんが逝去されました。

 1976年に日本人女性初となる国連公使となり、その後、特命全権公使や国連人権委員会日本政府代表を務められた緒方さん。

 生前の功績を称えるテレビ番組を見ていた時、緒方さんが話されていたこんな言葉が印象に残りました。

 

「決めなくてはならないのは私だから。(中略)トップというのはそのためにいるのです」

 

魂が揺さぶられる素晴らしい言葉です。

思わず胸がキュンとしました。

 

 この「決断」というのが、簡単なようで意外と難しい。

 

 特に、福祉・医療の現場においては、たとえ、利用者(患者)のニーズや疾病の状況が同じ(似ている)場合であっても、心身の状態や背景にある生活の状況、支援やサービスを通して解決すべき事柄は一人ひとり異なります。

 このニーズ(疾病)だったら、このように支援(治療)すれば、利用者(患者)の望ましい生活や自己実現、健康に結びつく・・・とは簡単にいかない。

 見えている事象だけで判断できない要素が多いからこそ、決断することはとても重く感じられ、時に避けたり、曖昧になったりしてしまいがちです。

 

「決断」の要となるのは「意思決定」

 どんなに難しいニーズや問題であっても、利用者(患者)の最善の利益の実現に向け、常に決断し行動していくことが現場には求められます。

 

 常にベストな決断をしていくためには、決断するために必要な選択肢を、どの程度絞り込むことができるかが一つの鍵になってきます。

 

 利用者(患者)を取り巻く現場の多くの関係者が知恵を出しながら、最善の解を選んでいく「意思決定」というプロセスをしっかりと経ていくことが大切になってきます。

 

 意思決定の中心となるのは現場のミドルリーダーです。

 ミドルリーダーは組織の規模や種別によってとらえ方が異なりますが、課長や部長、主任、リーダーと呼ばれる方々です。

 

 ミドルリーダーは現場の多くの職員の意見を集約しながら、さまざまな問題を解決するための方法を絞り込み、決断のための選択肢を整理し、提案していく役割を担っています。

 ここで選択肢を十分に絞り込めていないと、決断する人間に迷いが生じやすくなります。

 

 「うちの施設は物事がなかなか決まらない」

 

 そう感じる背景には、この意思決定のプロセスがうまく機能していない可能性があります。

 ケプナー・トリゴーメソッド(KT法)などを参考に、一度、意思決定のための思考プロセスについて見直してみることをお勧めします(図)。

「最善の決断」のために求められるもの

 ミドルリーダーが中心となり提案してきた選択肢の中から、最善の方法を決断するのは、理事長や施設長などトップリーダーであります。

 

 緒方さんは決断する際の判断基準として、自分自身の中にある「勘」をもっとも大切にされていたそうです。

「勘」それはすなわち「経験」であります。

 

 経験豊富なトップリーダーが、現場の実情から整理された意思決定に基づき、方向性や取り組み方を決断していく。

 ミドルリーダーとトップリーダーの役割が明確になってくると、利用者(患者)の変化や思いに常に柔軟に対応することのできる「最善の決断」を、適宜選択することができるようになりますので、迅速な対応へとつなげることが可能となります。

 併せて、経験は常に過去の事象になるということを忘れてはならないと思います。

 経験に裏打ちされた決断をしていくために、徹底した現場主義を貫かれた緒方さんの姿勢を見習い、常に経験のブラッシュアップをする姿勢を心掛けていきましょう。

 

© Kawahara Business Management Group.