医療機関・福祉施設の経営を総合的に支援するコンサルティング・グループ

創立50周年記念 お問い合わせ
  • 文字の大きさ
  • 標準

ブログ

医療機関・福祉施設でのコミュニケーション向上委員会ブログ

Vol.5「自分自身の『イメージの層』を厚くする」

2019.06.20

今回は、私の思い出話からお付き合いください。

 

前職で、福祉意識の醸成を旨とする仕事をしていた時期があります。

児童・生徒を中心にさまざまな取り組みを行っていたのですが、その中に、高校生のグループに、

特別養護老人ホームでボランティア活動をしてもらうというものがありました。

 

高校生たちは、「高齢者の方々に楽しさを届けたい」という暖かい気持ちでいっぱい。

「一緒に歌を歌ってみてはどうか」とか「手を取って踊りを踊るのはどうか」など、

たくさんの催しを企画してくれました。

 

活動当日。

ホールに集まった利用者や職員の方々を前に、高校生たちは一生懸命催しを披露しました。

もちろん大成功でした。

それなのに、朝は明るかった高校生たちの表情は一転、

帰路につく頃には、皆がっくり肩を落としていたのです。

 

落胆の原因は「イメージのギャップ」

 

がっくりしてしまった原因。

医療・福祉の現場で活躍されている皆さんなら、

すぐにお分かりになるかと思います。

 

簡単にいえば「イメージのギャップ」です。

 

明るい表情で笑ったり、元気な声を出してくれたり。

自分たちのイメージした「楽しむ姿」をきっと見せてくれる。

高校生たちはそう期待していたのです。

 

特別養護老人ホームで生活されている利用者の方々の中には、

高齢や認知症のために、感情を言葉や態度で思うように表現することが難しい方も少なくありません。

楽しんでいたとしても、大仰なリアクションをするのはなかなか難しいところです。

そうした様子を見て、「自分たちの活動が良くなかったのではないか」と思ってしまった・・・という訳です。

 

自分自身のイメージを超えたところにあるもの

 

こうしたことは、コミュニケーションのいろいろな場面で起こりうると思います。

伝えたいことを伝えたのに、自分が望むような反応が得られない。

そんな時は、自らのイメージにはめ込んで考えている自分がいるのかもしれません。

 

活動を通じ高齢者福祉のことを考えて欲しい。

そんな思いから、事前に余計な先入観を与えることなく見守ってきた私ですが、

反省会では、施設で暮らす高齢者の方々の暮らしぶりや

心身の状態、願いや思い、職員や家族の気持ちを丁寧に伝えました。

 

すると、高校生の間から、

「高齢者の方の『嬉しい』『楽しい』という気持ちを、もっと肌で感じたい」という声が自然に上がり、

再度施設訪問をすることが決まったのです。

 

当日は、催しの後に利用者とお話しする機会を作っていただきました。

 

「Aさんは嬉しい時は目をパチパチされるので、よく表情を見てお話してみてね」

「Bさんは楽しくなると手に少し力が入るので、手をつないでお話すると良いですよ」

 

こんなアドバイスを職員の皆さんにいただきながら、

高校生たちは、さまざまな形の「楽しむ姿」があることを知ると同時に、

それに寄り添った言葉や気持ちの返し方に気を配る大切さを学ぶ機会となったようです。

 

 

経験や年齢を重ねると、どうしても自分の中のイメージに固定して何でも考えがち。

かくゆう私自身もその一人で、

つい、「私がこう話したらこう返してくるだろう」というイメージに捕らわれてしまい、

結果、コミュニケーションに躓いてしまうことしきりです。

 

でも、「躓き(つまずき)」は自分自身の「イメージの層」を厚くするチャンス。

あの時の高校生たちのキラキラした瞳を思い出しながら、

今日もコミュニケーションの扉を開いていこうと思う今日この頃です。

◆ 久保田 真紀 プロフィール ◆
社会福祉士、保育士。都道府県社会福祉協議会にて、法人の経営基盤強化や施設の運営に向けた支援のほか、当事者活動支援、福祉教育にかかる業務に従事。現在は、㈱川原経営総合センターにて、法人・施設等の設立、運営支援、職場内環境改善に向けた調査分析などに携わる。
© Kawahara Business Management Group.