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介護経営のエッセンス

第3回 自事業の傾向を把握する②

2020.11.04

皆様、こんにちは。川原経営総合センターのシニアコンサルタントの田中律子です。

 

今年度の社会保障審議会介護給付費分科会は、オンラインで審議が行われており、誰でも傍聴することが可能です。分科会は指名制による委員の発言をベースに行われていますが、一方的な発言が続く様子にやや物足りなさを感じるのは私だけでしょうか。オンライン会議の場合、発言者にとって聞き手の状況が把握しにくいことと合わせ、聞き手にとっても発言者の雰囲気が伝わりにくいことが難点といえます。

私もコンサルティング先の介護施設において、先日オンラインで施設内階層別研修を実施しました。研修会場の全体像とスクリーンの映像が見えるようカメラを設置していただき、会場の受講者の様子を見ながら時に声掛けをしながら行いました。施設でパソコンが2台あれば対応できることが意外でしたが、施設職員も初めての試みに興味を持ち時代の変化を楽しんでいる様子が見受けられました。

今回は、10月15日の第188回介護給付費分科会の通所系事業の論点を参考に、自事業の管理指標に焦点を絞ってお話します。

通所系事業では、入浴介助加算がいずれの事業種別でも算定率が高く(下表、参照)既に標準サービスと言える点が論点として挙げられています。通所リハビリテーションでは、ADL評価に拘わらない一律の単価是正とリハビリ目的の促進が論点となりました。通所介護では、機能訓練計画で自宅での入浴回数を把握することなどが挙げられ、自立支援を目的とした入浴介助加算の在り方が審議されました。

 

※社会保障審議会 介護給付費分科会 第188回(R2.10.15)より加工

 

従来、通所系事業では、出来高加算の代表として入浴回数の増加を指標の一つとしていました。浴室という投資コストに対して持てる機能を十分生かし、単価を上げる目的であり、今回の算定率の高さは、その成果ともいえます。1日50単位とわかりやすく、利用者ニーズに合致し、入浴を特徴の一つとしてあげている事業所も少なからずあります。

皆様の事業所では、入浴介助加算の算定率は、何パーセントでしょうか。先の表では回数ベースが平均の算定率を示しています。通所リハビリテーションは約60%、通所介護は約70%の算定率が統計値です。統計値との比較は、事業種別の標準的なサービス提供内容を示したものと考えられます。統計値に至っていない場合は、現場の工夫が不足している可能性があります。標準的に提供できている範囲は、工夫次第で提供できる範囲と捉え実践していくことを推奨します。

次期介護報酬改定で入浴介助加算が改定されるかは、今の段階では未定です。私見では、入浴介助加算の単位数が低下し、リハビリ目的の場合のみが上乗せされるのではないかと予測しています。通所リハビリテーションでは基本報酬の体系そのものが見直される可能性もあり、基本報酬に包括される可能性さえあります。

介護報酬の改定内容に沿って、事業所内の管理指標を見直すことが必要です。現在の通所系事業は、介護保険制度の原点に基づき、レスパイトより自立支援の強化が図られています。今から入浴にリハビリ目的の位置づけを明確にし、介護報酬改定の影響を最小限に抑え、かつ最大限に活用できるよう取り組んで行きましょう。

 

webセミナー(無料、5分)で管理指標の目的をご紹介しております。合わせてご覧ください。本ブログに興味を持った方は、メールにてご連絡ください。2021年3月まで介護給付費分科会の事業別論点の整理一覧(お問合せ時点の直近まで反映)をお送りします。

 

 

次回(来月)は、特別編1 本当に人材不足かをご紹介します。

 

本コーナーの内容には筆者の個人的な見解が含まれています。ご意見、ご質問等は、介護経営戦略グループまでご連絡ください。

 

◆ 田中 律子 プロフィール ◆
2004年入社。以前のシステムエンジニアの経験より2000年に介護業界に関わったことをきっかけに、介護系事業所や介護請求システム会社を経由し、縁あって川原経営と出会い入社。福祉サービスに関する第三者現評価の業務を経て、現在は特別養護老人ホームや介護老人保健施設の戦略構想立案や経営改善、その他自治体からの研究受託などを行っている。医業経営コンサルタント資格保持者。
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