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保育所経営ブログ
VOL.20「保育の『働く』を考える③」
自分の感情をコントロールしつつ、一定の感情表現(対応)を仕事の中で求められる「感情労働」。
今回は、感情労働が保育の現場でどのように行われているのか事例をもとに見て行きましょう。
≪とある保育園での一コマ≫
最近、悪戯してばかりいる4歳児のP君。
ついにその日は悪戯が過ぎて、園のイスを壊してしまいました。
保育士のK先生は、体調がすぐれない中P君と話さなければならなくなりました。
一生懸命言い聞かせても一向に反省しないP君。
K先生も次第にイライラしてきました。
我慢できない。叱ってしまいそう・・・そう思った時、K先生はふとこう考えたのです。
P君が不安定になっている原因は何だろう。
悪戯はもちろんいけないことだけれども、それ以前にP君の不安定な気持ちに寄り添わなければ。
K先生はP君にこう言いました。
「先生今日はちょっと元気ないの。P君はどう? P君の体の中には元気がいっぱい詰まっているかな? もし元気が足りなかったら、先生の元気を分けてあげるからね」
そう言った途端、P君は泣き出してK先生に抱き着いてきました。
不思議なことに、その出来事があってからというもの、P君の悪戯はぴたりとやんだそうです。
後々分かったことですが、ちょうどP君の悪戯が始まった頃、同居していたお爺さんが体調を崩し入院されていたそうで、お家全体が落ち着かない状況にあったようです。
K先生は「思わず感情をぶつけてしまいそうでしたが、一歩留まり、P君の気持ちに寄り添うことができて良かったです」と話されていました。
こうした子どもとのやりとりの場面で保育士は、
自らの思いや感情を上手く表現できない子どもに変わって思いを汲み取り、心身の健全な発達を促すためのアプローチが必要です。また、保護者との場面では、子育てに関して親身で頼れるよき相談相手となることはもとより、子どもの人権を尊重し、専門家として毅然とした態度で臨まなくてはならない時もあります。
慈愛の念を持って優しく包み込むだけでなく、未来を見据えた厳しい態度を取ることが必要となります。親のように、年上の兄弟のように、先生・先輩のように、そして創造や元気をかきたてる仲間の一人となったり・・・という感じでしょうか。
一日の中で何役もこなす「保育士の仕事」ってすごいですね。
こうして書くと、「感情労働は大変!」と思われてしまいそうですが、悪いことばかりではありません。
感情労働に対する対価は、一言でいうと「感謝の気持ち」です。
これは、他の労働とは比べものにならない位大きいのではないでしょうか。
感情労働は、職務満足度が高まる要因の一つでもあるのです。
だからこそ、マイナス要因を増やさないよう、保育士の心のケアが大切になるのです。
過度の「感情労働」が続くと、以下のようなストレス反応が出ることが分かっています。
- 子どもと話したいと感じなくなる
- 自分の気持ちを抑え続けてしまった結果、本当の気持ちがよく分からなくなってしまう
- 過度に頑張り過ぎて、ある時、急にやる気がなくなってしまう
- 疲労感や抑うつ傾向が続いてしまう など
このような保育業務の特性を踏まえた、職員のストレスについて園としてどう対応して行ったらよいでしょうか。
次回から触れていきたいと思います。
久保田真紀

- ◆ 神林 佑介 プロフィール ◆
- 人事コンサルティング部 部長。保育園、老人ホームで働いた後、オーストラリアへ留学。施設での経験を活かしたいという想いをもって2012年に川原経営に入社。保育所・介護施設等を運営する社会福祉法人の給与・人事考課・研修の制度構築支援に従事。その他社会福祉法人の設立・合併・事業譲渡支援など、医療・福祉経営に関する幅広いコンサルティングを行っている。
保有資格:行政書士・保育士・社会福祉士
著書:「地域に選ばれる特別養護老人ホームの作り方」「介護ビジネスの動向とカラクリがよ~くわかる本」
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