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人事労務研究室ブログ
VOL.27「2025年施行 育児・介護休業法と雇用保険法の改正について」
少子高齢化や共働き世帯の増加、ライフスタイルの多様化など、日本社会は様々な変化に直面しています。その中で「仕事と育児・介護の両立」「高齢者の雇用促進」といった課題は、事業所や職員にとって重要なテーマとなっています。このような動向を踏まえ、政府は「育児・介護休業法」「雇用保険法」の改正を決定し、2025年4月から順次施行される予定です。今回は、法改正の内容と医療機関が行うべき対応について説明します。
1.育児介護休業法
1-①柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
仕事と育児の両立に向け、4月より、既に施行されている短時間勤務や残業免除、子の看護休暇といった制度において、対象年齢の拡大や内容の拡充が行われます。また10月からは新たに、育児期の柔軟な働き方を実現するための措置が義務化されます。大きな改正となりますが、抜け漏れがないよう確認し、体制の準備と就業規則の改定を行って下さい。
また、柔軟な働き方を実現するための措置は、事業所が5つの措置から2つを選択する必要がありますが、事業形態によっては採用が難しい選択肢もあります。医療機関においては、所定労働時間を短縮する短時間勤務制度の導入、子の養育を目的とした養育両立支援休暇の付与(年10日以上)は汎用性が高くお勧めです。診療時間や業務に影響がなければ、始業時間等の変更の導入も良いでしょう。事業所の状況と職員のニーズを把握した上で、導入措置を決定して下さい。
1-②仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務化
10月からの施行です。2022年4月より労働者からの妊娠・出産等の申出時に個別の周知と意向確認が義務化されましたが、時期や対応が拡充されます。
「個別の意向の聴取と配慮」とは、職員より勤務時間帯や勤務地、制度の利用期間の意向を聴き、事業所の状況に応じて配置、業務量の調整、制度の利用期間や労働条件の見直し等を行うことです。
意向の確認方法や聴取後の対応など、業務体制やフローを整えましょう。また職員に対して正確に周知できるよう、今回の改正を含めた育児休暇制度の理解を深めることが大切です。
1-③介護離職防止のための個別の周知・意向確認、並びに雇用環境整備等の措置の義務化
仕事と介護の両立に向けた改正も4月より施行されます。介護休業に関する周知浸透や利用促進を図るための措置が義務化となります。育児休業と類似している改正内容もありますので、併せて準備していくことをお勧めします。
2.雇用保険法
2-①育児休業等給付の拡充
4月より、育児休業に関する給付金が2つ創設されます。
Ⅰ 出生後休業支援給付
一定期間内に父母両方が14日以上の育児休業を取得した場合、最大28日間支給される制度です。通常の育児休業給付や出生時育児休業給付(賃金の67%相当)に加え、追加で給付金(賃金の13%相当)が支給される仕組みです。これにより給付率は賃金の80%、手取り収入100%相当となるため、休業前と同等の金額を受け取ることができます。
Ⅱ 育児時短就業給付
2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている職員に、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を支給することで時短勤務時の減収をカバーし、柔軟な働き方の選択を促進します。
申出があった際に対応できるよう、窓口の設定や手続き確認を行い、職員に周知しましょう。また創設に伴い、男性の育児休暇取得希望者や、時短勤務希望者が増加する可能性があります。職員の希望にこたえることができるような職場環境作りも非常に重要です。
2-②高年齢雇用継続給付の縮小
4月より、高年齢雇用継続給付が、賃金額15%から 10%へ縮小されます。また同じく4月から65歳までの雇用確保が完全義務化となります。高齢職員の雇用環境整備が進んでいることから、本給付金は今後も縮小していき、いずれは廃止される予定です。
本改正は職員の収入や生活に大きく影響します。給付金を前提とした賃金制度を運用している場合は、給与額の見直しを行うことをお勧めします。
最後に
大規模な改正となりますが、どの内容も職員が働きやすくなることを目的としています。働きやすい職場は、職員の満足度や定着率に繋がり、医療機関にもメリットがあります。
まずは制度の内容を正しく理解し、社内の体制準備や業務フローの作成を進めましょう。変更箇所については、就業規則の改定や労使協定の更新もお忘れないようご注意ください。これらの対応は専門的な知識が必要となる場合もあります。専門家のサポートを活用し、円滑な導入に取り組むことも一案です。お困りごとやご不明な点がございましたらどうぞお気軽にご相談ください。

- ◆ 薄井 和人 プロフィール ◆
- 人事コンサルティング部 副部長。2014年入社。主な業務内容は病院・診療所・社会福祉法人の人事制度構築支援、病院機能評価コンサルティング、就業規則改訂支援、人事担当者のOJT業務など。各地の病院団体・社会福祉協議会から講演依頼がある。講演内容は人事・労務、労働関連法令の改正情報、服務規程(パワハラ・セクハラ)など。
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