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人事労務研究室ブログ
VOL.26「最低賃金の改定による影響と対応について」
2024年10月から新たな最低賃金が施行されました。全国加重平均は2023年度の1,004円から51円上屏し1,055円となリ、過去最大の引き上げとなりました(2023年度は前年度比43円引き上げ)。物価上昇などを踏まえ、最低賃金は今後も上昇していく見込みです。今回は、賃金の引き上げにより起こりうる問題と対策についてご紹介します。
首都圏における改定状況
最低賃金および改定率は下表のとおりです。厚生労働省の「令和5年賃金引き上げ等の実態に関する調査」によると、令和5年(2023年)度の「1人平均賃金の改定率」は全産業で3.2%、医療・福祉業界は全国平均で1.7%であることから、今回の改定率の高さがわかります。
対象となる賃金の確認方法
まずは月給・日給を含む全職員の給与を確認し最低賃金を下回っている場合は改定する必要があります。確認の際は、時給への換算方法に注意が必要です。一部の賃金は月額から除外します。
ベースアップ評価料(以下、ベア評価料)の算定に伴い、基本給の引き上げや手当の増額・新設を行った医療機関もあるかと思います。ベア評価料の施設基準(基本給又は決まって毎月支払われる手当の引き上げ)を踏まえると、その財源を上記の除外対象の賃金に充てていない限り、最低賃金の計算基礎に含めることが可能です。ただし、将来的に制度が改廃された場合は、その減額分を自己財源で補てんすることになり、その一時的な財政負担は計りしれません。よって、ベア評価料の財源に頼ることなく、最低賃金をクリアすることが望ましいでしょう。
最低賃金引き上げが与える医療機関への影響
①扶養の範囲内で勤務する職員の労働時間の減少
最低賃金の上昇に伴い、所得税上の扶養上限(1 03万円)で勤務する職員を賃上げした場合は、労働時間を減少させることにより103万円未満を維持する必要があるため、他の手法により人手を確保することになります。103万円は暦年で判断するため、とりわけ年末にシフト調整による人手不足が発生するおそれがあります。年末に繁忙期を迎える耳鼻咽喉科や整形外科、小児科などは計画的に人員を確保する必要があります。
②雇用形態間の賃上げ幅の格差
パート職員を中心とした時給契約の職員を、最低賃金改定のたびに賃上げする一方、月給職員の賃上げを先送りにすることが往々にして起こり得ます。月給職員を賃上げしたとしても、先述した医療・福社業界の賃金改定率1.7%は月給換算すると概ね5,000円程度(月給300,000円の職員を1.7%賃上げした場合、 5,100円)で、時給換算すると約32円(5,100円÷所定労働数(160時間と想定)とした場合)程度です。時給契約職員は最低賃金連動、月給職員は業界平均相場の昇給を繰り返していると、本来中長期で雇用することを前提とした職員のモチベーションを低下させることにもなりかねません。雇用形態ごとの職務内容・責任の程度などを踏まえて、賃上げの程度を検討する必要があります。
対策と助成金の案内
限られた財源の中で、毎年の最低賃金の改定に対応しながら、人員数や人件費の適正化を図り続けることは容易ではありません。現時点で最低賃金をクリアしている医療機関でも、今後を見据えた制度や職場環境作りを検討するのも一案です。政府は、最低賃金引き上げに向けた選択肢として助成金のメニューを年々拡充しています。医療機関に適した助成金をご紹介します。
キャリアアップ助成金、業務改善助成金についての詳細情報はこちらからご確認ください。
最後に
今年は6月にベア評価料が新設され、10月に過去最大の幅で最低賃金が改定されるなど、賃金に関わる制度変更が相次ぎました。この機会に、医療機関の制度や現状を見直し、必要な対策を検討することもおすすめです。お悩みや疑閥がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

- ◆ 薄井 和人 プロフィール ◆
- 人事コンサルティング部 副部長。2014年入社。主な業務内容は病院・診療所・社会福祉法人の人事制度構築支援、病院機能評価コンサルティング、就業規則改訂支援、人事担当者のOJT業務など。各地の病院団体・社会福祉協議会から講演依頼がある。講演内容は人事・労務、労働関連法令の改正情報、服務規程(パワハラ・セクハラ)など。
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