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トップインタビュー

1976年生まれ。京都大学農学部卒業。米ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。ソニー株式会社、マネックス証券株式会社を経て、2012年に株式会社マネーフォワードを設立。新経済連盟の幹事、経済産業省FinTech 検討会合の委員も務める。18年1月「第43回経済界大賞」ベンチャー経営者賞受賞。

1968年生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。監査法人トーマツ勤務を経て、1998年川原経営グループ入社。2005年税理士法人川原経営代表社員・株式会社川原経営総合センター代表取締役社長に就任。18年より厚生労働省 中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織「医療機関等における消費税負担に関する分科会」委員も務める。

クラウド会計ソフトがもたらすメリット

    • 川原

      弊社では、お客様の業務効率化を支援するためにマネーフォワード社のクラウド会計ソフトの導入をご提案しています。すでに弊社でも約100件のお客様にご導入いただいています。本日は同社の代表取締役社長CEO の辻庸介様に、IT テクノロジーや人工知能(AI)がこれからの診療所経営、そして社会にどういった変革をもたらすか伺いたいと思います。

      まず、クラウド会計ソフトは従来の会計ソフトとどう違い、私どものお客様にどういったメリットがありますか?

    • 辻社長

      「マネーフォワード クラウド会計」は、ユーザーの方々がインターネット上にある当社のシステムにアクセスして利用する形態です。パッケージ型会計ソフトのように診療所のPCに入っているわけではありません。従来はソフトのインストールが必要でしたし、PCが破損するとデータが消失するリスクがありました。また、税制の変化などにこまめに対応できません。

      クラウド会計ソフトをご利用いただくことで、これらの問題点は解決します。当社のシステムでは、税法改正や消費増税にも自動アップデートで対応し、全て無料で更新されます。記録したデータは診療所の端末ではなく、当社のデータセンターで管理されます。データセンターでは、金融機関と同レベルの高いセキュリティを構築しており、データ消失・流出の心配はありません。何重ものバックアップ体制によりデータも保護されます。

      また、従来なかった機能も活用できます。銀行や決済システムと連携したデータの自動取り込み機能です。「銀行口座の取引明細」や「クレジットカードの利用明細」などを取り込んで仕訳し、帳簿に反映します。取り込みにはAI が使われており、使えば使うほど正確性が向上するという仕組みです。

      こういったシステムの導入により、効率化とともに経営状況がリアルタイムに確認できることが最終的なメリットです。診療所の場合、給与計算などをご自身でされている先生も多くいらっしゃると聞いています。当社の「マネーフォワード クラウド給与」システムも合わせて導入していただくことで(図表)、先生の本業である診療に集中していただくことができると思います。

打刻から給与明細までワンストップで「給与計算」にかかる手間とコストを削減
  • 川原

    会計事務所も医療・福祉界と同じく人財確保が厳しくなってきており、効率化しなければ生き残れない時代です。会計事務所側のやむにやまれぬ事情もありますが、導入される医療機関の側にもメリットがあるということですね。

  • 辻社長

    そうですね。別の視点に立てば、会計事務所の業務効率化ができれば、その分創出された時間をお客様への付加価値の高い助言、税務コンサルティングなどに充てることができます。長い目でみると医療機関の側にも大きなメリットがあります。

  • 川原

    クラウド会計ソフトもツールであり、ヒトとヒトとの関係や、お客様と会計事務所の信頼関係はより深まっていく必要があるのですね。

 

IT・テクノロジーの活用
これまでと、これからの未来はどう違うのか?

    • 川原

      昨今、ITにより私たちの生活が大きく変わっていくとニュースなどでもさかんに報道されています。具体的には、将来どのような社会になるのでしょうか。

    • 辻社長

      最新のIT・テクノロジー技術は、過去に比較して、速く広まることが特徴です。米国では人口の25%が利用するまでに電話では30年以上かかりましたが、スマートフォンは3年だったといわれています。また、これまでITはリアルな生活とは別個のところにありました。これが近年、“モノ”がネットに繋がり、IT が生活と一体化してきています( いわゆるIoT(Internet of Things))。IT・テクノロジーがすべての業界を変えていく時代に入ってきています。自動車業界の自動運転やAirbnbのような、インターネットを介して必要なものを必要な時だけ借りる「シェアリングエコノミー」を想像していただけるとイメージしやすいかもしれません。

      金融業界はどうでしょう。当社は、多くの都市銀行や地方銀行と提携している関係上、金融機関のトップとお話しをする機会が多いのですが、皆さん相当な危機感をもっておられます。スマートフォン1台で何でもできる時代になり、従来の事業形態ではサービス提供が維持できない。例えば、店舗が多すぎるなどコスト構造を変える必要に迫られています。事業融資を見ても、担保で融資する時代から事業性評価が重視され、かつスピード感も求められています。トランザクション・レンディング1の導入により融資審査のコストが抑えられ、近い将来、小規模な事業者・個人がより便利な金融サービスの恩恵に浴することができるようになります。手数料率も抑えられてくると思います。

    • 川原

      国はそういった社会の変化にどう対応していこうとしているのでしょうか。

  • 辻社長

    国は「第5期科学技術基本計画」(2016~2020年)でSociety5.02という概念を提唱しています。我が国が目指すべき未来社会の姿で、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会像です。私は経済産業省の「フィンテック検討会合」で委員を務めていたこともあり、国がかなり力を入れてフィンテックやキャッシュレス化に取り組んでいくことを肌で実感しました。キャッシュレス先進国の韓国では、クレジットカード利用分に関する所得控除制度が導入されています。日本もいずれそうなるのではないかと私は見ています。

    キャッシュレスというと決済手数料が気になるところですが、今後はデビットカードや電子マネーでの決済など、クレジットカード以外の決済システムも普及してきます。新しい技術が基盤のサービスは手数料率が1%程度と低く抑えられる可能性もあります。

  • 川原

    診療所では、キャッシュレス化などの社会の変化をどう取り込めるでしょうか?

  • 辻社長

    診療所でも、すでにオンライン予約システムを入れておられる先生は多いと思います。そして、オンライン診療も進んでいると聞いています。今後は内部管理の面の効率化がしやすくなると思います。

    会計時にクレジットカードなどが使えるようになれば患者さんの利便性は高まります。カード会社の手数料率については、3割負担の患者さんであれば医療機関の収益の30%が手数料対象となるわけですから、一般企業よりは相対的に手数料負担が少ないです。職員の業務という点では、まず、会計時に現金を扱わなくてよくなりますし、高額の現金を持ち運ぶ負担を軽減できます。さらにはクラウド会計との連携で会計処理の手間がぐっと軽くなるメリットがあります。

  • 川原

    新しい技術ゆえにセキュリティに不安があるとおっしゃる先生方もいらっしゃいます。

  • 辻社長

    まず、インターネットバンキングのセキュリティ対策ですが、ご自身の銀行口座にログインするパスワードとは別に、実際の振り込みなどの取引を行うためにはさらに別のパスワード(例:毎回自動的に変更され一度しか使われない“ワンタイムパスワード”)が求められることが多いです。金融機関も工夫を凝らしており、振り込みの限度額(0円に設定も可能)を設けることで万が一、パスワードなどが漏洩した際にも被害を最小限に食い止めることができます。むしろ、私も含め注意したいのは自分のパスワードをどこかにメモしたりして第三者に見られてしまう場合です。つまり、セキュリティ対策として何か新しいことが必要になるわけではなく、パスワードの自己管理の徹底がセキュリティ対策の大前提であることは従来から変わりありません。

    次に、当社のクラウド会計ソフトと金融機関の連携についてです。システム的に先生の銀行口座の残高情報や入出金履歴(これら参照情報には個人情報は含まれません)などを参照するだけですので、口座の中に直接タッチするシステムではありません。また、先ほど申し上げたとおりインターネットバンキングには2重のパスワードなどのセキュリティが設けられているため、仮に第三者が参照情報を閲覧できたとしても、具体的な操作は何もできません。

    どのサービスもそうですが、なかなか100%安全とは申し上げられないなかでも、当社としては安全なサービス提供を心掛けています。結果として、自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード ME」は6年間で700万人の個人の方々にご利用いただいていますし、事故は1件も起きておらずセキュリティシステムは金融機関と同レベルの体制です。また、個人情報保護の第三者認証であるPマークを取得し、2017年には東証マザーズに上場しました。プライバシーマーク審査機関や東証の厳しい上場審査基準をクリアすることによって、私どもは常に内部体制を確認しています。情報セキュリティの責任者には元金融機関の運用責任者を配置しています。

 

クラウド会計ソフトなどの活用
診療所業務の効率化、職員の満足度向上へ

  • 川原

    最後に、今後の診療所の業務効率化のイメージがどのようになるか。辻社長のビジョンをお聞かせください。

  • 辻社長

    現段階でも当社の「マネーフォワード クラウド会計」を中心に、給与計算、経費、資金調達のサービスとの連携ができるようになっており、先生方の会計情報を一気通貫で管理できます。リアルタイムで経営状況を把握し、目の前で経営状況を確認できる状態は先生方にとっても便利になると思います。もちろん、スマートフォンでの確認も可能です。また、先ほどもお話ししたとおり、銀行の融資のあり方も変わってきているので、当社のサービスを一定の条件でご利用いただいていれば、最速で翌日には融資資金が着金するような仕組みの構築を目指しています。

    さらには、私どものサービスではありませんが、窓口現金の授受などをキャッシュレス化できるサービスをご利用いただければ、患者さんの立場からすると多様な決済手段を使って診療所にかかることができるようになり、より利便性は向上します。そのデータは当社の「マネーフォワード クラウド会計」と連携できますので、経理業務も効率化します。できるだけ銀行に行かなくても経理業務が完結することによって、職員の負担も減ります。生産性が向上した分を給与に上乗せすれば、職員の満足度も上がります。

    私どもとしては、業務の効率化などを通じて、患者さん・職員に選ばれる診療所の未来をご支援させていただければよいなと考えています。

  • 川原

    本日は、貴重なお話をありがとうございました。

 

  • 決済代行サービスやクラウド家計簿・会計ソフトを提供する企業が、事業者に対して、銀行口座やクレジットカードの取引情報、決算情報などを用いて審査し、融資するサービスのこと。横浜銀行などが研究を開始している。
  • 狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会像。

 

Money Forward
株式会社マネーフォワード
事業内容:インターネットサービス開発
本社オフィス住所:東京都港区芝浦 3-1-21
msb Tamachi 田町ステーションタワーS 21F
ホームページURL:https://moneyforward.com/

「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というミッション、「すべての人の、『お金のプラットフォーム』になる」というビジョンを掲げ、日々インターネットサービス開発に取り組んでいる。

個人向けには、自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワードME」、自動貯金アプリ「しらたま」、“未来のおかね”を学べるお店「mirai talk 」、くらしの経済メディア「MONEY PLUS 」、金融商品の比較検討・申し込みができるプラットフォーム「MoneyForward Mall」などを提供している。

企業向けには、生産性や経営力向上を可能にするビジネス向けクラウドサービス「マネーフォワード クラウドシリーズ」、企業間後払い決済サービス「MF KESSAI」などを提供している。