医療機関・福祉施設の経営を総合的に支援するコンサルティング・グループ

創立50周年記念 お問い合わせ Twitter
  • 文字の大きさ
  • 標準
  • HOME
  • お知らせ一覧
  • 全日本病院協会 主催セミナー「持分なし医療法人への移行計画の認定制度」において、弊社代表 川原丈貴が講演いたしました。

お知らせ

全日本病院協会 主催セミナー「持分なし医療法人への移行計画の認定制度」において、弊社代表 川原丈貴が講演いたしました。

お知らせ2017.03.15

 3月14日、公益社団法人全日本病院協会において、2025年に生き残るための経営セミナー第15弾「持分なし医療法人への移行計画の認定制度」が開催されました。
 弊社代表 川原丈貴が講演しましたので、概要をご報告させていただきます。

※ 本記事の内容は、3月13日時点のものです。内容は正確を期しておりますが、本記事にもとづくいかなる結果についても、弊社は責任を負いません。具体的活用は、顧問の税理士等にご確認のうえ対応をお決めください。

* * *

 冒頭、全日本病院協会の西澤寛俊会長から、平成18年の医療法人制度改革から今日に至るまでの医療法人改革を俯瞰し、そのなかでも今回の新制度が画期的であることも踏まえ、全日本病院協会での本セミナー開催に至ったことのご挨拶がありました。

第1講「持分なし医療法人への移行計画の認定制度について」
講師:厚生労働省医政局医療経営支援課 課長 佐藤美幸 氏

 第1講では、本制度を所管されている医政局医療経営支援課の佐藤課長が講演されました。佐藤課長の資料は、厚生労働省ホームページからダウンロードできます。
 

○持分なし医療法人への移行計画の認定制度について
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000106957_14.pdf(厚生労働省ホームページからPDFがダウンロードされます。)

 
 佐藤課長からは、平成18年の医療法人制度改革によって、新設の医療法人には、「持分あり医療法人」は認められなくなったこと、平成18年当時に存在していた医療法人は、『当分の間』、「持分あり医療法人」のままで良く、「持分なし医療法人」へは自主的な移行とされたことなどの過去の経緯のご説明がありました。
 また、国による移行支援策として平成26年に創設された、移行計画の認定制度についてご紹介がありました。さらに、同制度が平成29年9月末をもって終了となることから、期間の延長・拡充の税制改正要望をしていたことについても説明がありました。
 今回は制度の延長だけではなく、新たな認定要件を満たせば法人への贈与税が非課税となる改正点について、その考え方と仕組みを解説されました。

第2講「持分なし医療法人への移行に関する手引書 ~移行促進税制を中心として~」
講師:厚生労働省医政局医療経営支援課 課長補佐 鞠子宜紀 氏

 続いて、同課の鞠子課長補佐から新制度の趣旨や方向性等について講演されました。
 

「持分なし医療法人」への移行に関する手引書 ~移行促進税制を中心として~平成28 年9月改訂
 
平成 26 年度 医療施設経営安定化推進事業「持分によるリスクと持分なし医療法人の移行事例に関する調査研究 報告書(持分なし医療法人への円滑な移行マニュアル改訂版)」委託先:株式会社川原経営総合センター
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000084148.pdf (厚生労働省ホームページからPDFがダウンロードされます。)

※(弊社注記)本報告書は、上記の「移行手引書」47ページ以降に抜粋のうえ引用されています。本報告書は平成27年3月に作成されたものです。医療法人の仕組み等の最新のご理解にあたっては、平成27年9月成立の「医療法等の一部を改正する法律」(平成28年9月、平成29年4月施行)を参照ください。

 
 この問題に取り組むにあたっては、医療法人の定款や持分(出資割合などの持分の状況も含む)にかかるリスクの理解、把握が重要であることが指摘されました。新制度の理解のために、医療法人の機関、持分について、持分なし医療法人への移行にあたっての課税関係の基本的事項、現行の認定医療法人の特徴と課題などの解説がありました。
 新たな制度における認定要件については、今後、法律が通過したあと、政省令で詰めるというスケジュールが示されました。本講では、現時点での厚生労働省の考えということで、第1講で佐藤課長が使用したスライドに戻り、新しい認定要件の趣旨を解説されました。

                    * * *

 既存の制度によって認定を受けている認定医療法人については、経過措置が講ぜられることになっており、厚生労働省が提出した法律案によると、新しい認定要件により再認定を受けることが可能であること、再認定を受けた場合は、持分なし医療法人への移行までの期間は旧認定期間の範囲内となることなどが提案されています。すでに認定医療法人となっているところは、このあたりの今後の行政動向に注意が必要です。

第3講:「経営者の観点から見た持分なし医療法人への移行について」
講師:株式会社川原経営総合センター 代表 川原 丈貴

 川原からは、新制度の経営面から見たインパクトと今後の対応についての解説を行いました。

 第一に、持分に内在するリスクを確認する必要があることを提示し、どのような仕組みで社員の退社等により払戻し請求が起こりうるか、また、払戻金額がどのような考え方で決められるかの解説を行いました。
 続いて、持分あり医療法人から持分なし医療法人への移行形態として、持分なし医療法人へ移行するさまざまなパターンを解説しました。なお、現状維持で持分あり医療法人のままの場合、評価額への対策が必要ですが、今回の税制改正で、非上場株式の類似業種比準価額の改正も行われており、医療法人の損益の状況よりも財政状態が重視されるようになったため、従来の対策による効果が低減する可能性も指摘しました。
 新認定医療法人の要件は厚生労働省の今後の検討事項となっているため、現時点では詳細は明らかになっていません。しかしながら、弊社のこれまでの持分なし医療法人への移行支援の経験から、持分なし医療法人への大きなハードルのいくつかがなくなったと考えている旨の説明を行いました。今回の税制改正によって、みなし贈与税非課税基準のうち役員の親族要件、医療機関名の医療計画への記載などが新たな認定要件には含まれないためです。これらの点については、従来は大きなハードルとなっていました。
 さらに、新制度下では、みなし贈与税について従来は税務署の個別判断であったものが、厚生労働大臣の事前の認定となります。移行時の税務リスク、不安定性が減り、事業承継対策に有効と考えられます。
 今回の制度改正は、持分にかかるリスクを解消し、地域で安定した医療を継続的に提供してほしいという狙いから行われました。地域医療の安定性確保という観点から考えると、内部留保を納税資金として使うのではなく、医療への再投資等に活用できるようにすることが重要です。持分なし医療法人への移行は、あくまで法人の自主性に委ねられてはいますが、せっかくのこの機会、制度の活用を検討することをご提案しました。

* * *

 講演ののち、佐藤課長、鞠子課長補佐とパネルディスカッションに臨み、全日本病院協会の常任理事中村康彦先生の司会に沿って、参加者との質疑応答を行いました。

© Kawahara Business Management Group.