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お知らせ

社会保険旬報 No.2681「医療法人の持分に内在する課題の解決策となるか ―新しい認定医療法人制度の概要―」【2/3】(「3.医療法人への贈与税課税問題」)を掲載しました。

お知らせ2017.09.07

医療法人の持分に内在する課題の解決策となるか (2/3)
  ―新しい認定医療法人制度の概要―

 株式会社 川原経営総合センター 法務企画部 副部長   山川 光成
                代表取締役社長     川原 丈貴

本記事は、社会保険旬報No.2681(2017.7.21)に掲載されたものです。
新しい認定要件などについては最新情報を確認ください。

<前回、「1.医療法人の持分を巡る国の動き」、「2.持分と事業承継の問題点」へ>

3.医療法人への贈与税課税問題

 持分なし医療法人へ移行することによって、個人に対する相続税の問題は解決するが、医療法人に贈与税が課される可能性が新たに発生する。医療法人に贈与税が課される仕組みを見ていく。
 相続税法第66条第4項では、持分を放棄したことによって相続税等の負担が「不当に減少する」結果になると認められる場合には医療法人に贈与税を課すると規定されている。また、相続税法施行令第33条第3項において「不当に減少する」と認められないための要件(以下「不当減少要件」という。)が規定されている。医療法人の事業承継を考える際に税金の問題をどのように解決するかというのは非常に重要なテーマであり、これまでは相続税法施行令第33条第3項の不当減少要件をクリアするための方法に焦点が当てられてきた。

 持分なし医療法人の形態としては、社会医療法人、特定医療法人及びそれ以外の医療法人(以下「一般の持分なし医療法人」という。)に区分される。不当減少要件をクリアした上で持分なし医療法人に移行する場合、社会医療法人もしくは特定医療法人へ移行するケースが多いと思われる。その理由として移行の際の課税リスク及び手続きの違いが挙げられる。社会医療法人については都道府県が不当減少要件と同等の認定要件を審査したうえで認定し、特定医療法人は税務当局が不当減少要件と同等の承認要件を審査したうえで承認する手続きを経る。そのため、社会医療法人もしくは特定医療法人への移行については贈与税の課税リスクが極めて低いといえる。一方、一般の持分なし医療法人の移行については、贈与税が非課税となるように要件を満たした上で移行することも、贈与税を支払った上で移行することも認められているため、行政側で不当減少要件をクリアしているか否かを確認することはない。その確認自体は医療法人側で行うことになる。一般の持分なし医療法人への移行において行政が行う手続きは定款変更の認可審査のみである。

 上記の理由から医療法人への贈与税が非課税となる方策を選択した場合、不当減少要件をクリアしているか否かの判断は医療法人が行わなければならず、結果としてそのリスクは医療法人が負うことになる。では、どこにリスクが潜んでいるのか。

 不当減少要件の内容を見ていく。具体的には次の5項目である。(1)医療法人の運営組織が適正である。(2)同族親族等関係者が役員等の総数の1/3以下である。(3)医療法人関係者に対する特別利益供与を与えない。(4)残余財産の帰属先が国等に限定されている。(5)法令違反等の事実がない。この中でも特に判断が難しいのが(1)と(3)である。何をもって適正というのか、また、どこまでが特別利益供与なのか、これを医療法人側で判断することは極めて困難である。医療法人としては非課税要件を満たした上で持分なし医療法人に移行したものと思っていても、移行後に税務当局の調査が入り、上記(1)と(3)に関して解釈が異なり贈与税が課される可能性もありうる。 

 このようなリスクを回避するために社会医療法人や特定医療法人へ移行する選択をする医療法人が多い。しかしながら、社会医療法人や特定医療法人には不当減少要件以外の要件が加えられており、移行に対するハードルを上げる要因ともなっている。現状において、持分なし医療法人への移行が進まない要因としては(1)社会医療法人又は特定医療法人移行への要件のハードルの高さ、(2)一般の持分なし医療法人へ移行する際の贈与税の課税リスクが考えられる。

 今回の改正では、医療法人への贈与税課税リスクに対処するため認定制度に大きな変更が加えられた。具体的にどのような変更がなされるのかを、これまでの認定制度と比較しながら税制面を中心に見ていく。

<次回、「4.従来の認定医療法人」、「5.新しい認定医療法人」、「6.まとめ」へと続く>

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